研究課題/領域番号 |
23760312
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
野田 俊彦 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (20464159)
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キーワード | 刺入型デバイス / CMOS / 神経活動計測 / 神経刺激 / 生体埋植 |
研究概要 |
昨年度作製し,基本的な動作検証に成功しているCMOSセンサチップについて,刺入型デバイスに適した実装工程の検討,最適化を行った.まず実装形態について検討し,基材となるフレキシブルプリント基板(FPC)の幅が最も狭くなるよう,設計の最適化を行った.狭幅化により,生体組織刺入時の侵襲性を低減する構造とした.このFPCにセンサチップをフリップチップ実装した.この際,Auスタッドバンプの形状と異方導電ペーストの塗布量を最適化する事で,実装歩留まりを向上させ,生体組織に刺入して使用するデバイスとして求められる信頼性と耐久性を向上させた.刺激・計測を行う電極は20ミクロン厚のPt製とし,十分な耐久性を持たせた.実装工程の最後に,デバイス全体をパリレンCでコーティングする事により防水するとともに,生体適合性を向上させた. 作製した刺入デバイスを生体模擬材料である生理食塩水,および生理食塩水ゲルに浸漬,刺入して動作テストを実施した.その結果,デバイスは正常動作し,設計通りの刺激動作が可能である事を確かめた.模擬信号を入力した計測能力評価では,50マイクロVp-pの信号が計測可能であることを確かめた.これら結果より,試作したデバイスが動物実験に供試可能な性能を有して居ることが明らかになった. また,来年度以降に向けた刺入型デバイスの発展を視野に入れ,重要要素であるセンサチップについて,昨年度の成果を踏まえた上で設計最適化,機能向上を行った.入出力電極パッドも小型化,配置の最適化を行い,チップサイズの縮小に成功した.設計したチップを試作サービスによって製作し,基本動作検証を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の計画通りに研究が進んでおり,順調に進展している.さらに発展的な内容にも取り組んでいる. 平成24年度は,平成23年度に設計,試作したCMOSチップの実装を進め,低侵襲を実現する幅狭形状かつ信頼性,耐久性の高い実装方法を確立した.生体模擬材料中での評価結果も良好であり,来年度実施予定の動物実験に向けた準備が整っている. さらに発展的な内容として,次世代デバイスの作製に向けた新たなCMOSチップの設計もすすめた.これを実装すれば,より高性能なデバイスを作製する事ができ,順調に進めば平成25年度中に動物実験まで完了できる可能性もある.
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今後の研究の推進方策 |
本年度作製したデバイスを用いて,ラットを対象とした急性実験を実施する.刺入部位は脊髄とし,デバイスからの刺激による,末梢神経の応答を観測する.またこれとは逆に,末梢刺激による脊髄応答を,試作デバイスで計測する事も試みる.この動物実験に向け,刺入デバイスの制御ハードウェア,ソフトウェアの最適化も実施する. 発展的内容として本年度試作したCMOSチップについても,平成25年度早々に実装作業に取り掛かり,生体模擬材料を用いた評価を行う.基本的な実装工程については本年度最適化済みであるが,樹脂包埋工程については検討の余地が残されている.本デバイスは生体内で動作させるため,信頼性,耐久性が高く,かつ,生体適合性に富んだ材料を用いて包埋する必要がある.現段階ではパリレンCを採用しているが,これ以外の材料についても検討し,場合によっては耐久性を高める実装形態についても検討する.これらの検討を進めるとともに,生体模擬材料中で連続通電試験を行い,長期耐久性についても検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
刺入型デバイス制御用ハードウェアの開発に必要な部品類と,動物実験で必要となる機器類を計上した.また包埋材料の最適化とその長期評価に必要となる材料,試薬類も形状した.発展的内容である次世代チップを搭載した刺入型デバイスの実装費用も計上している.上記いずれも金額は過去の購入実績を参考にした.測定用ノートパソコンは計測機器の制御ならびにデータ整理のために使用する. また前年度同様,成果発表旅費と研究成果報告として論文投稿費を計上した. 本年度の研究成果の内容を鑑み,当初計画していた平成24年度末開催の学会の参加を取りやめ,より有意義な情報交換が望める別学会(平成25年度開催)での成果発表に変更した.これに関連し平成24年度の研究費の一部を平成25年度に繰り越した.
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