研究課題
銅酸化物超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ(BSCCO)単結晶を抵抗変化メモリ(ReRAM)のメモリ層に用いることでペロブスカイト系酸化物ReRAMの動作機構に関する新たな知見を得た。1. 単結晶の導入により、多結晶が用いられてきたことによる物性解析の困難を排除し、酸化度に敏感な超伝導転移温度とメモリ効果の関係を調査することで、メモリ効果と酸化度の関係を初めて明らかにした。ρc/ρa > 10^4にもなる結晶異方性を利用することで抵抗変化が生じる場所の特定が可能となり、メモリ効果が酸化のギブズエネルギーが大きな電極と単結晶との界面で生じることも示され、これらの結果を基にペロブスカイト系酸化物ReRAMにおける抵抗変化モデルを提案した。2. 提案モデルより、抵抗変化が広義の酸化還元で生じ得ることが示された。本研究では単結晶内の酸素イオン移動に起因する抵抗変化に加え、単結晶内で水素イオンを移動させることでも可逆的な抵抗変化を生じさせられることを示した。具体的には、Ptの触媒効果を利用してBSCCO内に還元剤である水素を取り込み、電界により水素イオンを移動させることで動作するReRAMの作製に初めて成功した。水素イオン移動型は酸素イオン移動型に比べて書き替えが高速であり、抵抗の制御性も優れていることが分かった。3. 一方、主目的の一つであった原子間力顕微鏡(AFM)によるBSCCOへの抵抗値の直接書き込みは困難であると結論付けられた。これはBSCCOの抵抗変化現象の発現には強烈な還元処理が必要であり、低ギブズエネルギー電極の堆積によりBSCCOから酸素を奪うか、Ptの触媒効果を利用して水素をBSCCO中に取り込む操作が必要なためである。AFM書き込み領域の直接観察は実行されなかったが、結果として、効果的に抵抗変化現象を発現させるためのノウハウが得られ、特許の出願に繋がった。
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