研究課題/領域番号 |
23760316
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小山 長規 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10336802)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | センシング / LPFG / CO2レーザ / 照削 |
研究概要 |
(1) ファイバ照削システムの構築: 従来から所有していた光ファイバ被覆焼却システムに対し、ファイバを回転させるための機構と、ファイバ方向に移動可能な微動台を組込むことでファイバ照削およびLPFG書込みを可能とするシステムを構築した。(2) 石英の加熱と照削量の基礎検討: CO2レーザを照射して照削実験を行ったところ、石英が照削されるものの、照削部に石英微細粒が白く堆積する予想外の結果となった。高温で昇華した石英分子が結晶化しているものと推定している。本現象は、光部品に局所的に石英を追加する加工法の可能性があるため、別途検討することとした。(3) 照削の最小エネルギーとクラッド屈折率増加の解明: 照射エネルギーと照削量の関係を定量化し、照削に必要なCO2レーザの最小エネルギーが存在することを実験的に明らかにした。また、LPFG(Long Period Fiber Grating)の多重に照削によるλrのシフトを利用するが、照削によりλrが短波長側にシフトする原因は解明されていなかった。これを明確にするため、λrの外部媒体屈折率依存性を測定する方法を提案し、照削によりクラッドの屈折率が増加することを初めて明確にした。非照削部分は昇華点近くまで加熱された後に急冷され、密度上昇により屈折率が増加したものと推定できる。(4) LPFGスペクトルの再現性の向上: 本システム構築直後は、作成したLPFGごとにスペクトルが変動し、再現性に問題があった。LPFG書込み時のファイバへの印加張力が一定でないことが最大の原因と判明した。これを解決するため、一方のファイバホルダを開放し、ファイバ端におもりを付加することで印加張力を安定させた。この改善によりLPFGスペクトルの再現性を向上できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に実施する予定であった項目は次の通りである。(1)ファイバ照削システムの構築、(2)石英の加熱と照削量の基礎検討、(3)LPD-FG(Long Period D-Fiber Grating)の作成とLPD-FG間の光結合。 (1)に関しては、従来システムを更新することで照削およびLPFG書込み可能なシステムを予定通りに構築できた。照削とLPFG書込みの双方によるスペクトルへの効果はおおむね期待したとおりの性能を発揮できた。 (2)に関しては、実際にCO2レーザを用いて石英棒に対し照削を行った。石英棒のレーザ照射部位が平らに削れたことが確認されたと同時に、白色の石英微細粒が堆積するという新い現象の発見があった。 (3)に関しては、照削によってLPD-FGを作成することができた。2本のLPD-FG間の光結合は、明確な光結合に到っていない。照削によるクラッドの屈折率の増加量が評価できるようになったので、この屈折率に等しいマッチングオイルを付加するなどにより、新たな検討につなげる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を踏まえ平成24年度は次の項目に重点を置き研究を進展させる。(1)分布型LPFGセンサの作成と評価、(2)石英微細粒の再ガラス化に関する検討とその応用、(3)LPD-FG間の光結合。以下、各項目について述べる。 (1) 照削によるファイバのクラッド屈折率変化法の応用については、計画していた分布型LPFGの作成を進める。適用技術は、照削によるLPFGの共振波長λrの正確なシフトであり、温度分布を遠隔検出する分布型LPFGの実現を目標とする。 (2) CO2レーザ照射により石英板に石英微細粒が白く堆積する現象は新規の知見で、この現象を光部品に局所的に石英を追加する加工法としての可能性を検討する。このため、堆積した微細粒を再ガラス化するする加熱法を検討する。方策として、CO2レーザによる再加熱を取り上げる。CO2レーザによる再加熱を行うため、集光レンズなどの光学系に予算を充てる。 (3) 照削とLPFG書込みを組合わせることによりLPD-FGが作成可能であることが明らかになり、本年度は複数本のLPD-FGを作成し、両者間の光結合について検討をすすめる。まずは2本のLPD-FGを正確に近接できる実験系を構築する。これには昨年度に購入したファイバ近接用ホルダと3軸微動台を光学定盤上に設置する。この構造は照削により2 つのコアを近接させるよう配置でき、大きな結合効率が期待できる。さらにはCO2 レーザ照射条件の詳細な調整で精度良い照削により結合効率を向上させるDファイバ形状とその特性評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
照削により堆積した石英微細粒を再ガラス化するため、CO2レーザ光照射による再加熱に必要な集光レンズなどの光学系(400千円)を購入する。またLPD-FG間の光結合、共振波長の多重化による分布型LPFGセンサの実現などに多くの実験用の光ファイバ(300千円)が必要となる。さらに照削効果を評価することを目的とし、LPD-FG間の光結合現象をより促進する効果を持つクラッド屈折率測定用基準屈折液(300千円)を購入する。研究成果を発表するため国際会議の旅費や参加費(2回分で400千円)が必要である。その他、論文掲載費などで100千円を見込む。
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