研究課題
ダイヤモンドは多くの優れた特性を有するため、過酷な環境下で動作可能な高出力・高周波電界効果トランジスタ(FET)の材料として、有望なワイドギャップ半導体である。しかしながらダイヤモンド内のドーパントのイオン化エネルギーは大きく、室温において半導体光・電子デバイスとして駆動させるための十分な電子および正孔濃度を確保することは容易ではない。本研究では、上記課題を解決する手法として、“窒化アルミニウム(AlN)とダイヤモンドのヘテロ構造(以下このヘテロ構造をAlN/Diamondと記述)を用いたFET”という新しい切り口からの課題解決を試みた。以下の①から②の研究題目に従い研究遂行し、得られた知見をまとめる。①(111)面ダイヤモンド基板上へのAlN結晶成長技術の確立AlN/Diamondを形成するために、ダイヤモンド基板上に有機金属気相成長法を用いて、AlNをヘテロエピタキシャル成長させた。AlNの安定した結晶構造は六回対称構造を有すウルツ鉱構造であるため、成長用ダイヤモンド基板には、 (111)面を用いた。酸素終端構造を有すダイヤモンド基板上に水素とアンモニアの混合ガス雰囲気下にて熱処理(1250oC)を施し、その後AlNを成長させることで、AlNの剥離等が無い安定したAlN/Diamondを形成させることができ、同時にその界面にて正孔キャリアを得ることに成功した。②AlNをゲート絶縁膜としたFETデバイスの作製及びFET特性評価①の課題にて得られたAlNをそのままゲート絶縁膜に用いFETデバイスを作製した。FETデバイスは良好なピンチオフ特性を示し、ノーマリオンPチャネル動作を示した。ソース-ドレイン電極直下のAlNを電極堆積前に塩素ガスを用いて完全にエッチングし、その後、オーミック電極にパラジウムを用いたことでFET特性を大幅に改善させた。
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