研究課題/領域番号 |
23760320
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
菅 洋志 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 産総研特別研究員 (60513801)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | トンネル現象 / マイクロ・ナノデバイス / 熱工学 / 電子デバイス・機器 / エレクトロマイグレーション / ナノ空間 / 不揮発性記憶素子 / 白金 |
研究概要 |
電極材料や電極サイズ・形状の選択自由度が高い「平面型のメモリーセル」を用いて各種金属・温度・構造を調査することで,ナノギャップメモリの高温動作安定性の系統立った知見の獲得を目指した.平面型ナノギャップ型メモリーを各種金属により作製し,メモリーの動作安定性を高温度環境で調べた.シリコン基板上にEBリソグラフィーを用いて,ナノワイヤー形状のレジストパターンを形成.その後,各種金属を蒸着することで,金属ナノワイヤー構造をシリコン基板上に作製.その後,制御を伴った通電によって,ナノワイヤーを精度よく破断することで,ナノギャップ構造を形成.本研究を通じ,Pt, Ta,Wなどの高融点各種金属でのナノギャップ構造の形成技術を確立した.次に,高温素子測定用プローブステーション装置を用いて,メモリーの高温環境動作特性を調べた.メモリー動作を確認できたものの,On,Offに相当するそれぞれの抵抗値が大きくばらつく結果となった.電子顕微鏡による構造観察から,高温環境において,ナノ領域で微細なナノ構造や多結晶構造が変形していることが,抵抗値が変動の原因と考えられる.抵抗値のばらつきは素子間ばらつきとなり実用化の課題となることが懸念された.既存メモリーは,素子間ばらつきを1セルに1つの制御用トランジスタを配置することで抑制しているが,高温動作メモリーには,制御用トランジスタは使えず,記憶部自体に高温安定性が要求される.そこで,温度に対して堅牢な単結晶,もしくは良好な結晶性を持ったナノ電極を形成することが出来れば,抵抗ばらつきを抑えることができるのではないかと考え,ナノ構造を形成する金属部分の単結晶化形成を試みた.既存の方法と表面科学の古典的な手法を融合させ,新たな白金単結晶ナノ構造の形成手法を開発した.ワイヤーをジュール熱で単結晶成長させながら,ナノ空間を電子のエネルギーで破断する原理である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災による影響を少なからず受けた.1つはサンプル素子作製である.サンプル作製装置,設備が震災の影響で破壊し,復旧ならびに安全管理のため,長期間にわたり利用することができなかった.そのため,研究を加速するためのサンプル数を確保できなかった.2つは装置納入である.震災による影響により,予算配分の時期が遅れたばかりでなく,選定業者側での実験装置の納入が大幅に遅れた事による.
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今後の研究の推進方策 |
高温メモリーの駆動方法技術を確立する.ナノギャップメモリーに印加する電圧のパルス形状などを検討することにより,安定動作条件を探索することで,高温におけるナノ構造変化において支配的な現象が何であるかを追求する.また,高温動作メモリーの裏付けを計算科学の観点から行う.特に,高温条件下で起こる温度膨張とナノ構造の関連を追求する.高温動作安定性の系統だった知見,安定動作原理,温度限界,駆動方式などについて,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
メモリー作製のための材料費、測定器の保守用部品を消耗品として計上する。また,得られた研究成果は、国内学会と論文発表をしたいと考えており、それぞれ国内旅費、研究成果投稿料として計上する。高温素子測定用プローブステーション購入の際に端数として発生した端数を,次年度使用額として消耗品に充当する予定である
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