研究課題/領域番号 |
23760324
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小室 信喜 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (70409796)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 省電力化 / QoS / クロスレイヤ / WPAN |
研究概要 |
人を中心として10から20メートル程度の距離の通信によってさまざまな利便性や快適性などを提供するネットワークとして期待が高まっているWireless Personal Area Network (WPAN) は,現在の情報通信環境を一変させる可能性を持っており,ユビキタスネットワーク社会実現のための重要技術となっている.本研究提案の発端は,符号多値変調方式を用いるCDMA通信はパケット長を短縮できるため,パケット衝突確率,遅延や再送回数を減らすことができ,省電力化につながると期待できる点にある.提案方式は,DS/SSを用いるCDMA通信と比較し,2倍以上のスループットを達成できる可能性がある一方,符号間干渉や遠近問題によるビット誤り率の低下が問題となる.これに対し,物理層の情報を元にMAC制御を適切にかけることによって,ビット誤り率の低下を解決できるだけではなく,省電力効果も期待できる.本研究提案は,MACレイヤと物理レイヤの2つのレイヤから同時に通信品質向上,省電力化に対するアプローチをかけ,相乗効果を図るものである.符号多値変調方式とスリープ制御を適切に組み合わせることにより,消費電力の大幅な削減だけではなく,スループットの向上,データ到達率などの通信品質向上が期待できる.しかし,そのようなクロスレイヤによって,通信品質向上と省電力化を図るという発想は,本申請人独自のものであり,世界的にも同様なアプローチは見受けられない.本研究では,この研究を発展させ,本研究の有効性を示し,システムの最適動作について検討する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は符号多値変調を用いる省電力化方式について,理論的な側面からその特性を明らかにすることが課題であった.特に,(1) 符号多値変調方式を用いたランダムアクセス方式の省電力効果を明らかにする,(2) 符号多値変調方式の適応レート制御法を確立する,に関する検討を行うことが平成23年度の課題であった.(1)では,符号多値変調方式を用いたランダムアクセス方式の省電力効果を解析的に導出した.パケット長を短くすることによって,衝突率を減らすことができるため,パケット再送回数を減らすことができる.省電力化を図る効果を定量的に示した.(2)では,変調方式を組み合わせることによって通信品質に応じた伝送レート制御を行うための基本システムを考案し,その基本性能の解析式を求め,評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度の研究成果を踏まえ,伝送レートを動的に制御することによって,通品品質及び消費電力削減を図る方式を確立する.さらに,スリープ制御などのMACプロトコルと多値変調方式を組み合わせ,物理層の情報によって適切なスリープ制御を行う,クロスレイヤで省電力化と性能向上を図る具体的方式を提案する.特に,以下の2点に着目した研究を行う.(1) 符号多値変調方式に適したスリープ制御方式を確立する,(2) 符号多値変調方式とスリープ制御を組み合わせることによる省電力効果を明らかにする.(1)では符号多値変調方式に適したスリープ制御方式を確立し,その基本性能を導出する.特に,平成23年度に検討した事項 (符号多値変調方式を用いることによるメリット・デメリット)を考慮し,本提案方式の課題を解決するためのスリープ制御方式を考案する.(2)では,符号多値変調方式に対してスリープ制御を導入することによる省電力効果を評価する.シミュレーションにより,その性能を明らかにする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,解析,シミュレーション,実験を行い,性能評価を行う.ホームネットワーク用センサ数台およびセンサを操作するためのノート型パーソナルコンピュータ1台を購入する予定である.研究成果の積極的な対外公表を進めていく.そのため,旅費として使用する.国内2回,海外1回を計画している.また論文投稿も積極的に行い,別刷りに使用する.
|