人を中心として10から20メートル程度の距離の通信によってさまざまな利便性や快適性などを提供するネットワークとして期待が高まっているWireless Personal Area Network (WPAN) は,現在の情報通信環境を一変させる可能性を持っており,ユビキタスネットワーク社会実現のための重要技術となっている.本研究提案の発端は,符号多値変調方式を用いるCDMA通信はパケット長を短縮できるため,パケット衝突確率,遅延や再送回数を減らすことができ,省電力化につながると期待できる点にある.提案方式は,DS/SSを用いるCDMA通信と比較し,2倍以上のスループットを達成できる可能性がある一方,符号間干渉や遠近問題によるビット誤り率の低下が問題となる.これに対し,物理層の情報を元にMAC制御を適切にかけることによって,ビット誤り率の低下を解決できるだけではなく,省電力効果も期待できる.本研究提案は,MACレイヤと物理レイヤの2つのレイヤから同時に通信品質向上,省電力化に対するアプローチをかけ,相乗効果を図るものである.符号多値変調方式とスリープ制御を適切に組み合わせることにより,消費電力の大幅な削減だけではなく,スループットの向上,データ到達率などの通信品質向上が期待できる.しかし,そのようなクロスレイヤによって,通信品質向上と省電力化を図るという発想は,本申請人独自のものであり,世界的にも同様なアプローチは見受けられない.本研究では,この研究を発展させ,本研究の有効性を示し,システムの最適動作について検討する.
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