研究課題/領域番号 |
23760327
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
ZHANG Miao 東京工業大学, 理工学研究科, 産学官連携研究員 (90535866)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 偏波共用 / 導波管スロットアレー / 並列給電 / クロススロット / 拡散接合 / 偏波識別度 |
研究概要 |
本研究は60 GHz帯で多層構造完全並列導波管給電回路を組み合わせて給電素子と放射素子共にクロススロットを導入することで,高いアイソレーションと偏波識別度を有する直線偏波共用アンテナの実現を目指した。まず,基本構造素子となる2x2素子サブアレーの実現を試みた。設計周波数は61.5 GHzで,放射素子間隔は4.2 mmとなる。給電部に関して,給電導波管の中心軸にクロススロットを配置することで理論的に高いアイソレーションの実現を可能とする。一方で多層給電回路のレイヤ構造を工夫して,スロット厚さ、幅を最適化したことで良好な反射特性と高いアイソレーションを実現した。放射部に関して同じくクロススロットを放射素子に採用したことで高い偏波識別度を実現した。次に,16x16素子並列給電四層構造偏波共用導波管アンテナの設計を行なった。開口面積は67.2 mm四方で,全体厚さは6.3 mmで薄型化を実現できた。HFSSによる全構造解析の結果:反射特性についてVSWRが1.5以下の比帯域は垂直と水平直線偏波放射時にそれぞれ5 %と8.1 %であり;両入力ポート間のアイソレーションは周波数全域の58~66 GHzにおいて55 dB以上に実現でき;最大アンテナ利得と効率は垂直と水平直線偏波放射時にそれぞれ61.5 GHzで利得32.5 dBi、効率75%と62.8 GHzで利得32.5 dBi、効率72%であり;利得1 dB低下時の比帯域は同様に各偏波放射時それぞれ7.15 %と8.78 %であった。結論には,60 GHz帯で高利得・高効率な並列給電多層構造導波管スロットアンテナを設計したと共に,高いアイソレーションと偏波識別度を有する良好な偏波共用アンテナの設計にも成功した。更に,設計したアンテナを金属銅薄板の拡散接合技術による試作を行なった。現在はアンテナ評価の最中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動作原理および構造の基礎検討として、給電部と放射部にクロススロットを採用することで高いアイソレーションと偏波識別度の実現に成功した。60GHz帯で16x16素子偏波共用導波管スロットアレーの設計を行い、アイソレーションは周波数全域58~66 GHzにおいて55 dB以上に実現でき;各偏波放射時のVSWRが1.5以下の比帯域はそれぞれ5 %と8.1 %であり;最大アンテナ効率は利得1 dB低下時の比帯域はそれぞれ7.15 %と8.78 %であった。現在は金属銅薄板の拡散接合技術で試作したアンテナの評価中である。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度はアンテナ動作原理の確認と16x16素子偏波共用アンテナの設計を行うことで,高いアイソレーションと偏波識別度の実現に成功した。放射素子となるクロススロットとその励振用キャビティの結合で、斜め方向に高いサイドローブが出現することも確認された。今後はアンテナの帯域・放射効率を評価基準にスロット幅、キャビティ形状の最適化を行う予定である。また、拡散接合技術による四層構造アンテナ試作は初めてのチャレンジとなるため、層間の電気的接触性と接合の安定性に不安要素を残した。今年度は8x8, 4x4素子など小開口アンテナの設計と試作も行い、製作上での工夫を検討する。成功した後に広帯域化構造の検討及び大規模アレーの実現を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
提案構造と設計手法の確立を目指すと共にアンテナ試作と実験による検証を重視する。電波暗室でのアンテナ指向性・利得測定や近傍界測定装置によるスロットアレーの励振分布を直接評価して改善を図る。よってアンテナの試作費と実験設備備品費を計上する。また積極的に国内・外の学術会議で成果発表し,導波管スロットアンテナの分野で権威でもあるアメリカ・カリフォニア州立大学の研究者などと積極的に意見交換する。よって旅費を計上する。
|