本研究は、高速に動作するアナログ回路と精密に制御できるディジタル回路の長所を生かした、アナログーディジタル融合回路技術の追求の一環として、新しい広帯域無線通信信号の生成技術について研究した。その結果、提案手法により、最大帯域幅200MHzのDA変換器の出力を二系統合成して400MHz帯域幅の変調信号を生成できることを確認した。超高速CMOS回路はリーク電流が大きいために消費電力が増加する傾向にあるが、提案手法を用いることで、より低速な回路でも信号生成回路を構成できるため、無線通信器の低消費電力化に向けた基礎データとして有益である。さらに、信号のアナログ回路部が逆フーリエ変換回路として機能し、ディジタル回路部を短系列FFT回路で構成できることが見いだされ、当初考えていた回路規模よりもディジタル部を大幅に簡素化できる可能性を見いだした。広帯域信号生成においてディジタル回路部の消費電力は膨大となるため、この部分の回路の簡素化は低消費電力化への寄与が大きいと考えられる。 平成24年度は、二系統のアナログ合成系を実装し、帯域幅を合成する実証実験を行なった。5GHz帯の搬送波に対して400MHzの帯域の変調信号を生成する実験を行なった。本助成により調達した基板加工装置一式を活用してアナログ合成系を実装した。また、合成に必要な信号点数を少なくする過程において、変調歪みのメカニズムについて検討を行なった。 本研究の成果を基に、実時間ディジタル信号処理部の開発、および受信系の開発を進めており、ディジタル無線通信信号の伝送実験まで発展させたい。
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