研究課題/領域番号 |
23760337
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
渡辺 峻 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (70546910)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 秘密鍵共有 / ガウス情報源 / 秘匿増強 / 情報理論的安全性 / 盗聴通信路 / 量子通信路 |
研究概要 |
昨年度の研究では,ベクトルガウス型情報源からの秘密鍵共有において,鍵生成レートと公開通信のレートの最適なトレードオフが解明された.これにより,MIMO無線通信における信号を利用した秘密鍵共有において,既存の方法がどの程度改善の余地があるのか評価することが可能になった.また,昨年度は盗聴通信路において送信器が使用できる乱数の生成速度が制限されている問題を取り扱った.従来の研究では乱数を無制限に使用できるという仮定のもとで研究をおおなっていたが,実際の物理乱数生成器の生成速度は非常に遅いため,現実的ではなかった.そこで本研究では乱数の生成速度と盗聴通信路における通信速度のトレードオフを評価する問題を定式化し,最適なトレードオフとそれを達成する符号化法を解明した.また,昨年度は量子通信における量子通信路容量と秘匿容量を求める問題も取り扱った.一般的な量子通信路に対して量子通信路容量と秘匿容量の計算可能な公式を導出することは未解決問題である.しかしながら,劣化型と呼ばれる特殊な通信路に対しては,量子通信路容量と秘匿容量の計算可能な公式が導出できることが知られていた.本研究では,劣化型を含むより広い量子通信路のクラスを二つ導入した.そして,それらのクラスに含まれる量子通信路の性質を明らかにした.一方のクラスに含まれる通信路については,量子通信路容量と秘匿容量の計算可能な公式が導出できることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究課題を進めるとともに,関連研究として解決するべき新たな課題も具体的になってきた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究を進めていくうちに,本年度の成果として報告した二つの新しい問題が提起された.一つは盗聴通信路において送信器が利用できる乱数の生成速度が制限されている状況での通信速度を明らかにする問題である.もう一方は,量子通信路の量子通信路容量と秘匿容量の計算可能な公式を導出する問題である.本年度以降は,当初の計画に加え,これらの新しい課題にも取り組んでいく.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の成果を発表するために,いくつかの国際会議に出席する必要がある.従って,海外出張のために旅費を使用する.また,今後さらに研究を進めるためには,新たに文献を購入する必要もある.また,研究の進捗状況によっては数値計算のシミュレーションも行うため,新たな計算機の購入も検討している.繰越金については,現在投稿中の国際会議への旅費として使用する予定である.
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