研究課題/領域番号 |
23760344
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
三好 匠 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (40318861)
|
キーワード | 国際情報交換(フランス) / ピア・ツー・ピア / トラヒック分析 / トラヒック制御 / 映像配信 / 自律分散 |
研究概要 |
平成24年度は,当初の研究実施計画に従って,P2P型映像配信サービスの通信機能の挙動分析を実施した.具体的には,①遅延挿入によりP2Pトラヒックを制御する場合の詳細な挙動分析,②遅延挿入以外のトラヒック制御方式として,パケット廃棄や帯域制限を行った場合の挙動分析を行った.また,③P2P通信フローを自動的に認識・判定する手法についての検討も実施した. ①では,遠方ピアとの通信に追加する遅延時間を変化させた場合に,P2Pアプリケーションの通信割合がどのように変化するかについて前年度よりも詳細な分析を行った.その結果,500ミリ秒程度の追加遅延を挿入することでP2P通信の相手先を制御することが可能となり,50%以上のトラヒックを日本国内に誘導することに成功した.また,遅延挿入時の映像品質劣化に対するサービス品質評価実験を実施した結果,750ミリ秒程度までの追加遅延であれば品質劣化は十分低く抑えることが可能であることを示した. ②では,遅延挿入以外の手法として,遠方ピアとの通信に対してパケット廃棄や帯域制限を行った場合の挙動分析を実施した.実験結果から,パケット廃棄や帯域制限を実施した場合にも,遅延挿入と同様の効果が得られることが明らかになった.遅延挿入では,パケットを追加遅延時間分保持する必要があるが,パケット廃棄や帯域制限手法ではその必要がないため,メモリ消費を抑えることが可能となる. ③では,全体の通信トラヒックの中からP2Pトラヒックを抽出する技術として,SopCastとPPStreamの通信フロー分析を実施した.通信データ分析の結果,接続ピア候補リストが書かれたパケットの抽出や映像配信要求パケットの抽出に成功した.今後,これらの技術を用いることで,P2Pトラヒックの自動認識・判定機能の実現に繋げたい.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画どおり,①P2P型映像配信サービスの通信機能の挙動分析と,②P2P通信フローを自動的に認識・判定するための通信解析を実施し,所望の研究成果を得ることができた.また,通信機能挙動分析では,遅延挿入以外の方式としてパケット廃棄や帯域制御などの手法についても検討でき,更にはサービス品質に対する評価実験まで実施するなど,当初の予定を上回る研究業績を挙げることができたと考えている. 研究業績として,ジャーナル論文1件(電子情報通信学会論文誌採録決定),国際会議4件(INCoS2012 2012年9月,SEATUC Symposium 2013年3月,ICIS2013採録決定,SNPD2013採録決定),国内研究会3件(電子情報通信学会CQ研究会QoSワークショップ 2012年11月,NS研究会 2012年11月,同2013年3月),国内大会6件(電子情報通信学会ソサイエティ大会1件 2012年9月,総合大会5件 2013年3月)学生発表会1件(電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会 2013年3月)の発表を実施した.また,現在2件目となるジャーナル論文の投稿準備中である.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり,平成25年度の最大の研究目標は,P2P通信制御を行うルータ間での強調動作を実現するためのシステム開発を実施する. 具体的には,平成24年度の継続研究として,P2Pフローの認識・判定手法を実施する.前年度の研究成果として,SopCastとPPStreamのトラヒック認識手法についてある程度の目途が立った.本年度は,本手法をシステムとして実装するための検討を実施するとともに,他のアプリケーションにおいても実現可能な認識手法を検討する.次に,全体のP2P通信制御システムの設計と実装を実施する.提案システムは,P2Pアプリケーションの改変やインターネットサービス事業者の協力なしで動作するように設計しなければならない.そこで,導入された複数の制御ルータが自律分散的に協調することで,P2Pトラヒック誘導効果を高める手法について検討する予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
P2Pトラヒック制御ルータの分散協調システムを構築するため,1,2台程度のPCの追加購入を予定している.すでに購入済みのPCと合わせて利用することで,分散協調システムの実装と動作確認などを実施する.また,今年度が本研究の最終年度であるので,国際会議や国内学会などに積極的に参加して研究成果の発表,公開を実施する予定である.また,システム開発や実装,システム評価実験のために,アルバイト代の支出を予定している.
|