研究課題/領域番号 |
23760347
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
福地 裕 東京理科大学, 工学部, 准教授 (70366433)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フォトニックネットワーク / 超高速情報処理 / 先端機能デバイス / 非線形光学 / 光スイッチ |
研究概要 |
インターネットを基軸として拡大・進化し続ける高度情報化社会では、将来そのバックボーンを形成する光ネットワークにペタビット毎秒(Pbit/s)級の超大容量性が要求される。このようなシステムを構築するには、電子技術によらない多種多様な全光学的信号処理回路の開発が必須である。これまでに、いくつかの非線形光学素子を用いた超高速光段AND回路等が提案されているが、集積度や安定性、応答速度、雑音特性、効率等の点で十分な性能が得られず、実用には至っていない。 本研究では、擬似位相整合(QPM)波長分布制御高次非線形光学素子を新たに考案し、光波長変換やANDに加えて、OR/XORや半加算/半減算、全加算/全減算等の高機能全光超高速広帯域信号処理回路を実現する。最終目標は、インテリジェントな光ノードを備えた新世代高度光ネットワークの構築である。 初年度である今年度は、各種QPM波長分布制御ニオブ酸リチウム(LN)ベース全光超高速広帯域信号処理回路に対する詳細な特性解析を行い、次年度以降のデバイスの試作と各種実証実験に備えた。解析は、高機能かつ多機能な論理演算が実現され、更に複雑大規模演算にも対応できるよう、異常光導波型と常光・異常光両導波型の各導波タイプに対してそれぞれQPM波長を2つ持つ2段型から8つ持つ8段型までを対象とした。具体的には、それぞれの場合に対して信号処理回路としての性能を最大限発揮するための設計論を確立し、動作帯域・速度に応じたデバイス構造パラメータや入力光電力等の最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画に沿った数値計算は、異常光導波型および2つの偏波モードを持つ常光・異常光両導波型に対する導波路解析であるので、高い解析精度を実現するため周波数軸上で行った。更に、最適化するパラメータの数も極めて多く計算が非常に大規模であるため、申請者の研究室でこれまでに整備した電子計算機や所属大学の大型計算機を駆使し、更に新たに整備された高速の並列計算機を最大限利用して解析を行った。 以上により、本研究課題は現時点ではおおむね当初の研究計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最初に、解析で得られた最適パラメータを有する異常光導波型QPM波長分布制御LN、常光・異常光両導波型QPM波長分布制御LN、およびこれらを伝送用光ファイバに結合するための最適レンズ系を準備する。異常光導波型は高効率動作に軸足をおいた設計で最大1.28テラビット毎秒(Tbit/s)、常光・異常光両導波型は超高速動作に軸足をおき最大5.12Tbit/sで動作するよう各QPM波長に対応する分極反転領域長等を設定する。また解析モデルと対応させ、各導波タイプの導波路数は、QPM波長を2つ持つ2段型から8段型までの計7本とする。一方、90℃程度に暖めフォトリフラクティブ効果を避けるための温度制御器や結合レンズ系制御用微動台等は、これまでの研究で整備済みである。これらを組み上げデバイスの試作が完了する。 次に、製作した異常光導波型および常光・異常光両導波型デバイスを用いて、様々な全光超広帯域波長変換回路を実現する。ここでは、超広帯域動作の実証実験、光通信システム導入時のインパクト等を評価するためのシステム性能を測定する。具体的には、波長変換効率、波長レンジ、動作可能な入力信号電力、高速限界、入出力信号の符号誤り率特性等を測定する。これらの実験では、申請者の研究室で独自開発したビスマス系ファイバベース波長・パルス幅・繰返し周波数同時可変パルス光源や、これまでの研究で整備済みの光学機器、光学測定装置、伝送特性評価システム等を使用する。 以上により得られた実験成果は、国内学会や外国開催の国際会議等に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
解析に用いるための電子計算機はおおむね整備されていたため、電子計算機を新たに購入するための予算を節約することができた。節約により次年度に繰り越される予算は、次年度に請求する研究費とあわせて、実験計画に沿った実験器具や実験装置、実験設備を購入するための予算として用いる。 具体的には、異常光導波型QPM波長分布制御LNや、常光・異常光両導波型QPM波長分布制御LN、さらに結合レンズ系や光合波器、パッチコード、コネクタ等の光学消耗部品を発注・購入する。
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