研究課題/領域番号 |
23760350
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
四方 博之 関西大学, システム理工学部, 准教授 (00510124)
|
キーワード | 無線通信 / 群れ制御 / 無線LAN / メッシュネットワーク |
研究概要 |
本年度は、ワイヤレスメッシュネットワークにおけるノード配置の人為的労力や被災地でのノードの配置に伴う危険性を回避するため、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)等のロボットにルーター機能を持ったメッシュノードを搭載し、自律的なノード配置を行うモバイルメッシュネットワークにおける移動制御アルゴリズムの提案と評価を行った。モバイルメッシュネットワークにおいてカバレッジ範囲を最大にするにはルーター間の距離をなるべく大きくする必要がある。 しかし、距離の大きいリンクは伝送速度が低く、STA の発生位置によってはボトルネックリンクとなり、エンドノード間のスループットを低下させる。そこで、本研究では、カバレッジ範囲を維持しつつ、ボトルネックリンクによる通信品質劣化を低減する移動制御アルゴリズムの提案を行った。計算機シミュレーションにより提案アルゴリズムを評価し、移動無線ルーター群の通信性能を考慮した移動制御技術の確立とその効果の明確化、移動制御と無線通信性能の間に存在する相互作用の明確化、及び群移動制御に適した無線通信方式・プロトコル設計技術の確立とその効果の明確化を行うことができた。また、移動制御アルゴリズムを実装したノードによる実機実証を試みた。移動制御の既存アルゴリズムであるレイノルズフロッキングアルゴリズムを、IEEE 802.11無線LANインタフェースを搭載した移動ロボット上に実装し、移動制御アルゴリズムの実験評価を行った。その結果、正確な移動制御を行うためには、位置情報精度が重要な役割を果たすことを明確にした。一方、理想的な位置情報を用いた実験では、正確な群移動を実現し、移動制御アルゴリズム及び無線通信方式の有効性を確認できた。また、移動通信ネットワークに必要となる省電力無線通信方式についても検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、これまでに、(1)自律的に無線ネットワークインフラを構築する移動無線ルーター(移動機能付き無線通信基地局)群の通信性能を考慮した移動制御技術の確立とその効果の明確化、(2)形状、構成個体数、接続状態などを確保しながら移動する群の移動制御と無線通信性能の間に存在する相互作用の明確化、(3)大規模移動体群の群移動制御に適した無線通信方式・プロトコル設計技術の確立とその効果の明確化について、(3)の大規模化を除いては、その目標を達成したと言える。大規模化については、今年度の検討中に明確になった位置情報精度の問題が課題として残っている。当初は、上記(1)-(3)の目的を平成25年度までに達成予定であったため、達成度は、“やや遅れている”とする。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度、明確になった位置情報精度の問題を含め、群れの大規模化に必要な実用的な問題を整理し、実用的な環境下でも、正確な群れ制御が可能となるアルゴリズムを検討する。まず、CSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)プロトコルに基づいた通信による情報交換を導入し、中継により群れを構成するノードの通信範囲を拡大する場合の遅延と通信範囲の関係を明確化する。そして、その遅延と通信範囲のトレードオフの群れ制御に対する影響について検証する。さらに、群れを構成するノード数を増加させた場合の通信品質に対する影響も評価する。そして、これらの実用的な影響を考慮した評価を行うことにより、大規模移動体群の群移動制御に適した無線通信方式・プロトコル設計技術の確立とその効果の明確化を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、ノード移動制御アルゴリズムの評価の大規模化を行う予定であった。このため、まず中規模ネットワークでの実験を行ったところ、実験過程において、GPSの位置精度に起因する問題点が発覚した。今年度は、この問題への対処法の検討に集中したため、最終的な大規模化の検討を先送りにした。また、同理由により学会発表についても先送りとしたため、未使用額(次年度使用額)が生じた。 次年度は、最終的なネットワークの大規模化を目指し、ロボットプラットフォーム用ロボット及び通信装置の購入を行う。また、その結果について学会発表を行う予定である。次年度使用額はこれらの物品購入及び学会出張旅費に使用する予定である。
|