本年度は、実用的な環境下でも大規模な群れの制御が可能となるアルゴリズムを検討した。まず、CSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)プロトコルに基づいた通信による情報交換を導入した。IEEE 802.11に基づくCSMA/CAで動作する多数の移動ノードが、レイノルズフロッキングアルゴリズムにより群れを成して移動する際の群れ形成状況や通信品質を評価するためのシミュレーションプログラムを作成した。このプログラムを利用し、中継により群れを構成するノードの通信範囲を拡大する場合の遅延と通信範囲の関係を明確にした。そして、その遅延と通信範囲のトレードオフの群れ制御に対する影響について検証した。さらに、群れを構成するノード数を増加させた場合の通信品質に対する影響も評価した。そして、これらの実用的な影響を考慮した評価を行うことにより、大規模移動体群の群移動制御に適した無線通信方式・プロトコル設計技術の確立とその効果の明確化を行った。 また、研究期間全体を通して、(1)自律的に無線ネットワークインフラを構築する移動無線ルーター(移動機能付き無線通信基地局)群の通信性能を考慮した移動制御技術の確立とその効果の明確化、(2)形状、構成個体数、接続状態などを確保しながら移動する群の移動制御と無線通信性能の間に存在する相互作用の明確化、(3)大規模移動体群の群移動制御に適した無線通信方式・プロトコル設計技術の確立とその効果の明確化を行うことができた。
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