研究課題/領域番号 |
23760351
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
諸橋 功 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所超高周波ICT研究室, 専攻研究員 (40470059)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光源技術 / テラヘルツ / 無線通信 |
研究概要 |
本研究は、マッハツェンダ変調器ベース光コム発生器を用いてミリ波・テラヘルツ波の発生およびその変調信号の発生を行うことを目的としている。本研究で用いている光コム発生器は、1つの光変調器を用いて超平坦な光コムを発生でき、変調器単体でも200GHz程度の帯域幅を持つ光コム信号の発生が可能である。したがって、本光源を用いることで、多周波数のミリ波・テラヘルツ波帯信号を発生することが可能である。 今年度は本光源を用いたミリ波帯信号発生の実証を行った。光コム発生器を12.5GHzの高周波信号で駆動することにより、12.5GHz間隔、200GHz超の帯域を持つ光コム信号を発生させた。その光コム信号の各成分を光波長分離器により分離し、必要な周波数だけ離れた2成分を抽出した。抽出した2成分を高速フォトダイオードに入射することにより、2成分の差周波に相当する高周波信号を発生させ、スペクトラムアナライザでその信号の評価を行った。現在利用可能なスペクトラムアナライザの制約のため、37.5GHzの信号を発生させ評価を行った。その結果、発生された高周波信号は、1Hz以下の非常に狭い線幅と0.02radの低い位相雑音を有することが明らかになった。これは、本方式により発生されるミリ波・テラヘルツ波帯の信号は、多値変調への適用も可能であることを示す非常に重要な結果である。 さらに、マルチキャリア信号発生の実証を行った。前述の方法と同様に、発生された光コム信号から3成分を抽出し、それらを高速フォトダイオードに入射した。それぞれの周波数間隔は25GHzおよび37.5GHzとした。その結果、25GHzおよび37.5GHzのビート信号が同時に発生され、どちらも1Hz以下の狭線幅であることを確認した。これにより、本研究の最終目標であるミリ波帯マルチキャリア信号発生が原理的に可能であること示す重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、次の点について明らかにすることを目的としている。(1)発生された光コム信号の中からモードを抽出してフォトミキサ素子に入射することによりミリ波・テラヘルツ帯信号を発生させる。(2)光コム信号から抽出された2モードうち、一方に変調をかけることにより、ミリ波帯の変調信号を発生できることを示す。(3)光コムから3モードを抽出し、複数の周波数の変調信号を発生できることを示す。今年度は、(1)に該当するミリ波の発生に関する実験を計画して研究を行った結果、フォトミキシングによる高周波信号の発生およびマルチキャリア信号発生に成功している。以上のことから、研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に得られた成果を発展させ、75GHzから110GHzの周波数帯で実験を行う。光コム発生器により発生される光コム信号の帯域は200GHz程度であったことから、光コム発生部は光コム発生器単体とする。高速フォトダイオードをフォトミキサとして用いてミリ波帯信号を発生させ、検出にはWバンドミキサを用いる。光コム信号からAWGを用いて抽出した2成分のうち、一方に変調を掛けてフォトミキサに入射することにより、ミリ波帯の変調信号を発生させる。このときの変調は強度変調を用いる。発生された信号を受信側のWバンドミキサに入力し、ヘテロダイン法により検出を行う。さらに上述の実験を発展させ、複数周波数の変調信号発生を行なう。光コム信号から3成分を抽出し、そのうち2成分に変調を掛けて合波した後、フォトダイオードに入射する。これにより、2つの周波数成分を持つミリ波変調信号を発生できる。受信側ではフィルタを用いて各成分を分離して受信することにより、それぞれの信号を検出し、クロストークなしに分離できることを確認する。フィルタで分離できない場合は、受信側の局部発振器の周波数をチューニングすることにより信号の分離を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、ミリ波帯変調信号発生に研究費を重点的に使用する。具体的には、光変調器および高周波信号増幅器などに使用する。光変調器は、光コム信号から抽出した成分に変調を掛け、高周波信号増幅器は、受信したミリ波・テラヘルツ波変調信号を増幅する目的で使用する。
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