研究課題/領域番号 |
23760359
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
榊原 一紀 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (30388110)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 自律分散型電力ネットワーク / 蓄電池 / 電力融通 / 数理計画 / 包絡分析法 |
研究概要 |
平成23年度においては,将来に渡る発電量・消費量が既知の仮定のもとで,電力利用に関する効率を最大化するように電力の融通量を決定する数理計画計画モデルを構築した.最適化計算にあたっては,現実に測定した太陽光発電データおよび家庭消費電力データ(太陽光発電データは10種類5年分,家庭消費電力データは117軒1年分)を使用した.様々な設備配置に対する最適化計算を行い,そこで得られた効率指標値を用いて,包絡分析(DEA)法による比較を行った.これにより,天候や消費パターンに対する効率指標の変化を確認し,電力ネットワークに必要な機器スペックを数値的に明らかにした.これらの成果について,2つの国内学会(第24回 回路とシステムワークショップ(査読有),第39回知能システムシンポジウム(査読無))にて成果報告を行った.さらには,電力設備の物理特性として蓄電池の劣化特性に着目し,電力ネットワークに投入された蓄電池の劣化を抑制するための制約条件を組み込んだ最適化モデルを作成した.具体的には,劣化特性と密接に関わりのあるサイクル回数に上限を設けた.蓄電池は一般に高価であり,また蓄電池の充放電則を適切に設定しなければ,蓄電池が急速に劣化特性を示すことが知られており,蓄電池を中心とした電力融通の方式を確立する必要がある.このモデルに基づき,基礎的な数値実験によってモデルの妥当性を確認した.以上の成果により,当初の目的である,太陽光発電機器および蓄電池の最適配置問題の解法を構築し,自律分散型発電方式の特性について解析が達成されたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自律分散型電力ネットワークに対する数理最適化モデルが構築された.このモデルでは,将来に渡る発電量・消費量が既知の仮定のもとで,蓄電池の物理的特性や,変転設備の機器特性を制約条件として取り込んだ上で,複数種類の電力設備を用意し,様々な電力設備を選べるようになっている.また,地域内で閉じた発電電力融通と外部系統電力との売り買いを共に表現した.包絡分析法を活用した効率評価の方法を確立した.これにより,電力設備の投入に対する,消費パターンや季節ごとの効率指標の比較が可能となり,電力ネットワークに必要な機器スペックを数値的に明らかにした.電力設備の物理特性として,蓄電池の劣化特性に着目した最適化モデルを構築した.これにより,蓄電池を中心とした電力融通の方式を確立するための,教師パターンとしての融通則が得られると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に開発した,蓄電池の劣化特性を抑制するための制約条件を組み込んだ最適化モデルを用いて,蓄電池の充放電マネジメント則を導出していく.その際には,様々な電力ネットワーク条件に対する最適化実験を行い,充放電制御アルゴリズムのレファレンスとして活用していく.平成23年度の効率評価に基づき,高効率な地域電力融通と蓄電計画を分単位でリアルタイムに生成するアルゴリズムの開発を行う.このとき,これまでに同定されたシステムパラメータを活用し,さらには電力利用効率の上界が明らかになっているために,得られた計画の定量的な評価を行う.アルゴリズムの開発にあたっては,電力発電,消費パターンを学習・予測し,また自らが属す地域の電力不足状況を予測し,適切な電力融通を決定することで高効率な電力利用を実現するための機械学習手法を実現する. 開発したアルゴリズムを用いて,将来的に現実の家屋を模擬した複数軒間での電力融通実験にて検証を進めていく.そこでは,研究協力者による電力機器特性などの研究成果との融合を図ることにより,実証的な検討を行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
制御アルゴリズムの開発及び評価のための計算機を購入する.本研究で対象とする組合せ最適化問題は一般に,繰り返し型の計算を基本とするものが多く,計算量が多くかかるため,高度な計算能力が必須である.また,実験により得られたデータを可視化・マイニングするためのソフトウェアを購入する.研究成果は,学会・講演会および国際会議で発表する予定である.また,研究成果は国内/国際論文誌にも投稿する.そのための,旅費および論文投稿料として研究費を使用する.
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