研究概要 |
本研究では、光アドレス電極とLAPSを融合した新規測定系を提案し、試作装置を開発した。光アドレス電極は、光照射された位置における導電性の上昇によって電極表面から局所的な電流を溶液中に流すことができる。LAPSは、光照射された位置におけるイオン濃度を計測できる半導体化学センサであり、光走査によってイオン濃度分布を画像化することができる。複合装置は、光照射によってミクロな導電領域と測定領域を自由にアドレスすることができ、これによって、生体試料等に対して、光アドレス電極による局所的な電流刺激を行い、LAPSによってその反応を測定することが可能になる。 まず、ガラス基板上に堆積したアモルファスシリコン薄膜を用いた光アドレス電極の作製プロセスを確立した。次に、光アドレス電極およびLAPSをスキャンするためにDLPを用いた光源を開発した。この光源は最大153,600個の光スポットを生成することができ、1個の光スポットの最小サイズは43μm~2、毎秒最大1,440回の点滅が可能である。測定ルーチンの最適化や電気的なノイズの低減により、最大の解像度で全スポットをスキャンするのに要する時間を1時間以下に短縮することができた。なお、光アドレス電極で生成可能な電流の大きさは、DLPユニットに組み込まれたLEDの光強度によって制限されており、より高出力のLEDを用いることによって、より大きな電流を得られることを示した。 最後に、光アドレス電極とLAPSを組み合わせた複合測定システムを構築し、実証実験を行った。まず、LAPSおよび光アドレス電極の動作を個別にテストし、次に両者を組み合わせた測定を行った。光アドレス電極とLAPSに挟まれたマクロチャンバ内に電解質溶液を注入し、光アドレス電極によって局所的に生成したpH変化の空間分布を、LAPSによって検出することに成功した。
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