研究課題/領域番号 |
23760364
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
木寺 正平 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00549701)
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キーワード | UWBセンサ / レーダ信号処理 / 電磁界逆散乱問題 / 多重散乱環境 / リモートセンシング / 超分解能イメージング |
研究概要 |
超広帯域(UWB)レーダシステムは,数cm級の距離分解能を有し,粉塵環境・暗闇等の光学計測が適用困難な状況での3次元計測が可能である.このため,災害救助,資源探査等の各種ロボットセンサやセキュリティセンサに有用である.既に従来の分解能限界を超えるレーダ画像化手法RPM(Range Points Migration)法を提案しているが,計測領域が数十から数百波長の準遠方界計測においては,処理時間・画像化領域・精度等において解決すべき問題点がある. 本年度では,多重散乱環境を考慮した高精度楕円体外挿法を検討した.既に人体等の目標を複数の楕円体群で近似し,RPM法より得られた一部のイメージから高精度に楕円体を外挿補間する手法を提案している.しかし,画像化において目標からの直接散乱波(一回散乱波)しか用いていないため,楕円外挿の基となる画像領域が非常に狭小となる場合は,外挿精度が著しくという劣化する問題があった.同問題を本質的に解決するため,室内空間で壁を想定し,同壁と目標間で生じる多重散乱波(特に二回散乱波)を用いる手法を考案した.同二回散乱波は,壁に対して鏡像位置にある素子からの直接反射波とみなすことができ,RPM法をバイスタティックモデルに拡張することでイメージング可能である.また精度・ロバスト性を確保するため,実空間ではなくデータ空間(素子位置と距離で定義)で外挿する手法に拡張し,その有用性を数値計算により例証した.同手法は,RPM法の特質により目標と目標間の二回散乱波の影響を抑えることで虚像を抑圧することも確認している.今後は,同手法の3次元化及び偏波情報を用いた目標外挿法を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
UWBレーダによる狭小素子可動域における目標認識法において,当初設定した多重散乱波を積極的に用いることで目標境界領域を高精度に外挿する手法を確立し,その有効性を数値計算により例証している.多重散乱波の識別には,位相情報を利用することで直接散乱波と二回散乱波を区別することに成功し,複数の楕円目標が存在して,干渉が生じる状況においても,高精度に境界を外挿することを実現している.本手法は,壁の位置を既知として扱っている以外は,目標等に関する先見情報は一切用いておらず,高速に目標形状やサイズを把握できるため,室内環境での目標認識及び位置・形状計測に重要な貢献をなすと予測する.これらの成果を踏まえ,本研究は当初の研究目的を達成するために順調に成果を上げていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,特に移動目標計測において多重散乱波を積極的に用いる手法を確立する.既に直接散乱波を用いたマルチスタティックモデルによる高精度移動目標推定法を提案し,3次元問題においてその有効性を数値計算により示した.しかし,観測領域が制限される場合では,有効な画像化領域が狭小となり,移動目標計測ではその誤差が無視できないと予測される.本年度では,前年度に得られた多重散乱波を用いた楕円外挿法を移動目標に拡張する.具体的には,壁等を想定し,直接散乱波では影領域となる画像化領域をイメージングもしくは同データ情報を利用して,等価的に開口面積を増大させて,目標形状・位置を高精度に推定する手法を確立する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では,実験環境を整備し,実応用を想定した各手法の評価を実施する.既に基礎的なレーダ実験設備(電波無響ボックス・広帯域パルス発生器・オシロスコープ)が整備されている.これに加えて,移動目標を模擬するため,目標移動シミュレータと人体等を模擬した各種の目標を購入する.また,本研究領域(超分解能UWBレーダ技術)を先導するために,本研究課題に基づく研究成果を積極的に公表・広報する必要があるため,複数の国際論文誌掲載及び国際会議等に関わる出張経費等を本予算より拠出する.
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