研究課題/領域番号 |
23760370
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 道彦 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (00447856)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ウイルス検出 / 誘電泳動 / インピーダンス計測 |
研究概要 |
本研究の目的は、ウイルスを電気的に検出するシステムの開発である。そのために、抗体修飾した金属ナノ粒子上にウイルスを抗原抗体反応によって結合させ、そのウイルス結合金属ナノ粒子のみを選択的に微細電極間に誘電泳動集積し、その際の金属ナノ粒子の集積に伴うインピーダンス変化を利用して電気的にウイルスを特異検出することを目指している。平成23年度は、目的とする誘電泳動インピーダンス計測法(DEPIM)にてウイルス粒子(無毒化ウイルス)あるいはタンパク質を検出することが出来るかどうかを試みた。まず、タンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)がDEPIM検出できるか試みた。ウイルス粒子はタンパク質によって形成されているため、その構成要素であるタンパク質を検出することは、ウイルス検出の第一歩と言える。その結果、従来の細菌検出に比べて時間を要するものの、BSAの検出が可能であることを確かめた。DEPIMは、検出対象物を誘電泳動によって微細電極間に集積することでそれを検出している。そこで、BSAを蛍光染色してDEPIMを行ったところ、検出後の電極間に蛍光像が確認され、BSAの誘電泳動集積を目視でも確認した。その後、対象ウイルスをキャプシドウイルスのノロウイルスとし、遺伝子組換えによって作製したキャプシドウイルスを用いてDEPIM検出を試みたところ、その応答を取得するための条件を見いだし、ノロウイルス由来の信号を得ることができた。このときの検出感度として、2.5ng/ml(1 x 108 capsid/ml)を300秒で検出できるという結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ウイルスを誘電泳動インピーダンス計測法(DEPIM)によって検出することが目的である。そこで、その対象ウイルスをキャプシドウイルスの一種であるノロウイルスとして、その組換えキャプシドがDEPIM検出可能かどうかを試みている。従来、DEPIMは細菌検出に用いられており、大きさが数μmの細菌に比べて、非常に小さな(数十nm)ウイルスを検出できるかどうかわからなかった。それは、DEPIMが誘電泳動による検出対象物の集積によりそれを検出しており、その誘電泳動が対象物の大きさに大きく依存するからである。そこで、手始めに手に入り易いタンパク質(ウシ血清アルブミン)でDEPIM検出可能であるかどうかを確かめ、その後、ノロウイルスの組換えキャプシド(ウイルスの外殻タンパク、無毒化ウイルス)を用いてDEPIM応答を取得した。現在までにその両方が可能であることを確かめており、本研究の目的のほぼ半分を達成しているといえる。しかし、現在までの方法では、特定のウイルスを特異的に検出するという方式となっていない。ウイルス検出においては、どのウイルスがどの程度存在するかが重要であり、これを実現するために、次に抗体を用いた検出系を確立する。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに誘電泳動インピーダンス計測法(DEPIM)法によって、ノロウイルスの組換えキャプシドを検出可能であることを確かめている。しかし、ここまでの手法ではノロウイルス以外のものも同時に検出してしまい、その特異検出には至っていない。そこで、当初の研究計画にあるように抗体を用いたノロウイルスの特異検出を試みる。抗体を用いてノロウイルスを検出するために、次の方法を試みる。金コロイドや量子ドットの表面を抗体で修飾し、それをノロウイルスと結合させてウイルス/ナノ粒子複合体を形成する。その複合体を誘電泳動集積する。誘電泳動は対象物の電気的性質によって特性が変化する。ウイルス粒子とナノ粒子とを結合することで、それぞれが持っていた元々の性質とは異なる電気性質となり、その誘電泳動特性が大きく変化することが予想される。これによって、抗体による特異結合と電気による特異検出を可能にできると考えている。今後は、本手法を実現することを目的に研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成24年度)の研究費は、主として消耗品の購入に充てる。消耗品には、ウイルス粒子調製、ナノ粒子、誘電泳動インピーダンス計測のための微細電極作製およびその検出溶液の調製に使用するものが含まれる。また、最終年度でもあることから、本研究による成果を広く公表するための学会参加のための旅費や論文発表のための諸経費として使用する予定である。現在のところ、50万円を超える備品の購入は予定していない。
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