研究概要 |
本研究の目的は、ウイルスを電気的に検出するシステムの開発である。近年、インフルエンザウイルスやノロウイルス、口蹄疫ウイルス等の突発的な流行があり、その迅速な検出法が求められている。本研究では、そのために、細菌の高感度検出法である誘電泳動インピーダンス計測法(Dielectrophoretic impedance measurement, DEPIM)をを応用した。DEPIM法は、検出液を作製した後は、全て電気信号で操作できるため、自動化が可能で簡便な操作を可能にすると考えている。 検出対象をウイルス性胃腸炎の原因ウイルスであるノロウイルスとし、その組換えウイルスキャプシド(無毒化ウイルス)を利用して、DEPIM検出可能かどうかを確かめた。DEPIM法は対象を誘電泳動力によって微細電極間に捕集して、その捕集に伴う電極間のインピーダンス変化を計測する。そこで、ノロウイルスがどのような条件において誘電泳動可能であるかを、溶媒の導電率と印加電圧の周波数をパラメーターに確かめた。その結果、導電率が約0.01 S/m以下であれば、正の誘電泳動、すなわち誘電泳動による捕集が可能であることがわかった。 ノロウイルスキャプシドを用いてDEPIM測定を行ったところ、誘電泳動捕集に伴う電極間のインピーダンス変化を示し、その検出感度は、流速50 μl/minであれば2.5 ng/μl、流速5 μl/minにすると2.5 pg/μlであった。この検出感度は、迅速検査法のひとつであるイムノクロマト法とほぼ同程度である。一方で、夾雑物に対してどのように対応するかが課題として残った。
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