研究課題/領域番号 |
23760375
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研究機関 | 金沢工業高等専門学校 |
研究代表者 |
柳橋 秀幸 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 講師 (10553208)
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キーワード | SPA / 計測工学 / 植物工場 / 環境制御 / 生体生命情報学 / モデル化 / 菌類 / 茸 |
研究概要 |
当該年度はまず,前年度に着手したSPA(スピーキング・プラント・アプローチ)式生育環境制御システムの動作検証機の製作を継続し,これを構築した。構築後は研究室にて動作試験を実施し,茸の生体電位変動(バイオリズム)の解析結果と環境制御との連動の調整を重ねた。以上の取り組みの結果,茸の生体電位変動を活性度の指標として生育環境を制御するシステムを完成するに至った。当該システムの仕様は以下の通りである。第一に,計測した直近特定時間分の生体電位から電位の傾きを計算し,あらかじめ設定した正あるいは負の閾値を超えた場合に光源をオン・オフする。第二に,湿度を一定間隔で意図的に変動させ,これに伴う生体電位変動に基づいて光源の強度を調節する。第三に,茸の自発性の生体電位変動の減衰を検出した場合には光源の種類を変更する。 実地試験実施のための茸工場の一角を確保できたことから,次にSPA式生育環境制御システムの複製機の製作に取り組み,これを完成させた。このとき,試験中に生体電位計測のための針電極が抜けて生体電位データが得られなくなることを防止するため,2組の計測系を用意し,両方を並行して解析することで,どちらか一方に不具合が生じた場合にも環境制御が中断されないように工夫した。同時に,工場に設置するハイパワーLED光源モジュールの製作に取り組み,これを完成させた。システムおよびモジュールは当該茸工場に設置し,実地試験を開始した。実地試験より得たデータを解析した結果,茸の生体電位変動に基づいて正常に茸工場内の環境を制御することを確認した。また,環境制御のパラメータ設定により,茸子実体の品質に差異が生じる傾向を掴み,パラメータの微調整の段階への足がかりを得るに至った。 このほか,各種環境刺激に対する茸子実体の生体電位応答の追実験を実施し,当該現象をモデル化するとともに,論文投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主として,茸の生体電位応答特性に基づいたSPA式生育環境制御システムの構築に取り組み,研究室実験用の動作検証機および実地試験用の複製機製作を経て,茸工場での実地試験を開始するに至った。研究計画当初,この段階には平成25年度中に到達する予定であったため,この点については順調に進展しているものと自己評価できる。ただし,今後は実地試験で得られた各種データを分析し,これを新規に製作する研究室実験機にフィードバックして栽培に適したアルゴリズムの再検討やパラメータの微調整を実施する必要がある。この工程に当初予想よりも多くの時間を要すると見積もられるため,最終目標に対する現時点での進捗状況は,大幅に進展していると言うよりも,順当に進展していると言える。 各種環境刺激に対する茸子実体の生体電位応答に関する実験データの収集については,再現性確認実験をこなし,当該研究に必要となる基礎的知見の多くを得た。この知見に基づいて,各種環境刺激に対する茸子実体の生体電位応答特性の電気回路モデル化にも取り組んだ。その結果,簡易な電気回路要素にて諸特性を表現できる見込みを得た。この点についても,当初の計画に対しておおむね順調に進展しているものと自己評価する。 なお,後者の成果についてはすでに論文としてまとめており,現在投稿中である。これを足がかりとし,当該研究の最終目標であるSPA式生育環境制御システムについても研究内容をまとめて論文として発表し,植物工場の新規の形として提案することによって,植物工場の発展に貢献したいと考えている。この点に関しても,順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,茸の生体電位応答特性に基づいたSPA式生育環境制御システムの研究室実験用試作機および実地試験用複製機を製作し,茸工場での実験データの収集を開始した。この取り組みの結果,SPA式生育環境制御システムにおける環境制御のパラメータの設定により,栽培した茸子実体の品質に差異が生じる傾向を得た。今後は,これらのデータを詳細に分析し,定量評価を進める。 次に,当該分析結果を踏まえて,環境制御アルゴリズムやパラメータ設定の見直しを図ることによって,高効率で高精度なSPA式生育環境制御システムの確立を目指す。これを達成するため,研究室実験用試作機を改良してさらに精度の高い環境制御を実現できるようにし,実験室レベルでパラメータ設定と茸子実体の形態形成との関係を詳細に評価する予定である。これを達成するために,環境制御チャンバの再構築,環境制御モジュールおよびプログラムの改良に取り組む。 また,次年度は当該研究の最終実施年度となるため,すべての成果を統合してまとめ,学会発表および論文投稿によって,広く研究成果を発表したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究の取り組みの結果,次年度に使用予定の研究費が生じた。これは主に,旅費および人件費・謝金が抑えられたためである。当初,海外の学会への参加を検討していたが,国内で好適な国際会議が開催される運びとなり,これに参加したため旅費が大幅に削減された。また,当初はデータ分析の一部を外部委託する予定であったが,研究室学生の多大なる貢献があり,人件費・謝金の発生を抑えることができた。 当該研究費および次年度研究費については,主に消耗品購入と旅費,学会参加費,論文投稿費として充当する予定である。上述したように,次年度は環境制御チャンバの再構築と環境制御モジュールの改良を実施する予定であり,金属フレームやアクリル,断熱材,データ入出力モジュール,マイコンなどへの支出が見込まれる。また,次年度は当該研究の最終実施年度となるため,可能な限り多くの学会発表や論文投稿に取り組みたい。そのための旅費や学会参加費,論文投稿費も見込まれる。
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