本研究は、レーダリモートセンシングの分野における二つの大きな技術トレンドである、偏波情報を徹底的に活用するポーラリメトリ観測と、送受信のアンテナを分離して多様な入反射角のジオメトリを実現するバイスタティック観測を融合し、ターゲットの物理量推定に関する新たな手法を導出することを目指すものである。これに対し、バイスタティックなコンフィギュレーションを容易に実現できる好適な課題として、GNSS衛星の送出電波を用いるGNSS reflectrometryに、偏波観測のコンセプトを導入する新たな着想の研究を実施した。 平成24年度は、前年度に製作したショートバックファイア(SBF)型アンテナを使用し、GPS反射波の偏波状態の直接測定を進めた。当SBFアンテナは、90度ハイブリッドやスイッチ、アンテナ自体の回転を組み合わせ、直線偏波(水平/垂直/45度/135度)、円偏波(右旋/左旋)の受信電力を測定可能である。これら受信電力により算出されるストークスパラメータを用い、植生に覆われた土壌を模擬した実験ターゲットに対して、偏波情報計測の実験を重ねて実施した。具体的には、植生の高さや受信アンテナの角度を変化させた計測を行い、偏波度や交差偏波比との関係を評価した。また、さらに、将来の小型衛星ミッション等に向けた、偏波情報測定コンフィギュレーションの単純化の検討として、2 偏波受信電力からの偏波度推定に着目し、推定精度の評価を行った。
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