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2012 年度 実施状況報告書

方向依存性に起因する非線形摩擦と重心のずれを考慮した全方向移動ロボットの軌道制御

研究課題

研究課題/領域番号 23760380
研究機関北海道大学

研究代表者

江丸 貴紀  北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30440952)

キーワードnonlinear friction / trajectory control / nonlinear compensator
研究概要

本研究は,オムニホイールを用いた全方向移動ロボットマニピュレータで問題となっている,1)オムニホイールの方向依存性に起因する非線形摩擦,2)移動ロボットにマニピュレータを搭載した際の重心のずれ,という大きな2つの課題の解決を目的としたものである。平成24年度は,研究計画に従い以下の観点から研究を行った。
課題1 [オムニホイールの非線形摩擦のモデル化]:平成23年度は,車輪と床面の摩擦について一般的なモデルを構築し,シミュレーションでその有効性を確認した。その結果,特定の床面を仮定した場合における妥当なモデルを構築することができた。平成24年度では,非線形摩擦の影響がより大きくなり低速度領域に着目し,オムニホイール移動ロボットが低速で移動する際の摩擦について機構面から解析を行いモデル化した。さらに,これらのモデルを反映した制御系を構成することにより,制御性能の向上を図った。
課題2 [オムニホイールの非線形摩擦に対してロバストな軌道制御系の提案]:我々が目的とする摩擦は非線形かつ時変特性を持つため,一般的な制御器で精度よく制御することは大変困難である。平成23年度は,既存のPID制御系や最適制御系に対し容易に追加できる非線形補償器の開発を目的とし,これまで提案してきたディジタル加速度制御系(DAC)を改良し,非線形補償器としての性能を向上させる研究を行った。平成24年度では柔軟ロボットアームを制御対象として用いることにより,提案手法の汎用性を検討するとともに提案手法の改良を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要に記載した通り,平成24年度は2つの課題を解決することを目的に研究を実施した。課題ごとの評価は下記の通りである。
課題1 [オムニホイールの非線形摩擦のモデル化]:平成24年度では,非線形摩擦の影響がより大きくなり低速度領域に着目し,オムニホイール移動ロボットが低速で移動する際の摩擦について機構面から解析を行いモデル化した。オムニホイールは,その機構によって特に低速度領域で大きな,そして強い非線形特性を持つことが知られている。そこで,低速度領域にターゲットを絞りモデル化を行うことで,実際のオムニホイールロボットの挙動を精度よくモデル化することに成功した。しかしながら,オムニホイールに固有の問題である方向依存性に起因する非線形摩擦について,実機の挙動と一致するような精度の良いモデリングができたとは言い難い。これからの研究を推進するに当たり,その基礎となる一定の成果を上げることができたため,評価を「(2)おおむね順調に進展している」とする。
課題2 [オムニホイールの非線形摩擦に対してロバストな軌道制御系の提案]:平成24年度は既存のPID制御系と容易に組み合わせることができる非線形補償器について,(1)理論面から解析を行い,既存の制御系との関係を明らかにした,(2)新たなアプリケーションとして柔軟ロボットアームに提案手法を適用することにより,手法の汎用性を確認するとともに問題点を明らかにする,ということを行った。その結果,ここで提案した制御器は移動ロボットのみならず様々なメカニカルシステムの制御に応用が可能であり,さらに既存のPID制御器に組み合わせることにより非線形項が補償できることから有用性が高いと考える。そこで,この評価を「(2)おおむね順調に進展している」とする。
これらを踏まえ,平成24年度全体の自己評価として「(2)おおむね順調に進展している」とする。

今後の研究の推進方策

平成25年度は,平成23,24年度の研究によって得られた成果,そして課題を元に研究を実施する。具体的には,平成24年度で残された課題1を解決するとともに,課題3,4という2つの新しい課題を解決することを研究の目標とする。
課題1 [オムニホイールの非線形摩擦のモデル化]:平成24年度で得られた成果をもとに,より汎用的なモデルの構築を目指す。具体的には,モデルにおけるパラメータを決定するための実験を様々な環境下で行うことにより知見を深め,モデルの一般化を目指す。
課題3 [重心のずれのモデル化]:小型高出力のサーボモータを用いることによりマニピュレータを構成し,全方向移動ロボットの車体に搭載する。このマニピュレータを駆動することにより重心のずれが生じるため,これをモデル化し,重心のずれを補償する制御法の構築を目指す。このモデル化は大変複雑であるため,最初の段階としてはロボット上に倒立振子が存在するようなモデルを想定し,モデルの3次元化を目指す。ここで構築する重心のずれのモデルは,全方向移動ロボットのみならず一般的な車両移動型ロボット,クローラ型ロボットなどに対して拡張可能なものでなくてはならず,そのための評価もここで行う。
課題4 [重心のずれに対してロバストな軌道制御系の提案]:強い非線形時変特性を持つ重心のずれに対して,課題2で提案した制御法をまず適用し,それを発展させることにより効率的な研究の推進を図る。このように様々な非線形モデルに対し提案する制御法を適用することにより,汎用的・実用的な非線形補償器を構成するための知見を得る。

次年度の研究費の使用計画

当初計画では,調査・資料収集のための旅費を160千円計上していたが,国内のみならず国外での調査も必要となり,2012年10月22-26日にPalma, Majorca (スペイン) で行われた「2012 International Symposium on Nonlinear Theory and its Application」に参加したため,当初の予算を超過した額を執行した。本来であれば外国旅費は計上していなかったが,昨年度に予算の一部を成果発表のために繰り越したため,その予算を成果発信のために利用したものである。消耗品費については当初予算よりも大幅に減額した額を執行しているが,これは既に代表者および研究協力者が所有する計測機器などを流用することにより,効率的に研究を行ったためである。
平成25年度については,本研究費によって得られた研究成果を迅速に社会に発信するための旅費を効率的に執行するとともに,その他の設備備品,消耗品などは,研究代表者や協力者が所有する備品・機器などを考慮し,計画に従い効率的に執行する予定である。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2014 2013 2012

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (12件)

  • [雑誌論文] Approaches Based on Particle Swarm Optimization for Problems of Vibration Reduction of Suspended Mobile Robot with a Manipulator2014

    • 著者名/発表者名
      Guoliang ZHONG, Yukinori KOBAYASHI, Takanori EMARU and Yohei HOSHINO
    • 雑誌名

      Journal of Vibration and Control

      巻: Vol.20, No.1 ページ: 1-21

    • DOI

      10.1177/1077546312458534

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Optimal control of the dynamic stability for robotic vehicles in rough terrain2013

    • 著者名/発表者名
      Guoliang ZHONG, Yukinori KOBAYASHI, Takanori EMARU and Yohei HOSHINO
    • 雑誌名

      Nonlinear Dynamics

      巻: 13(published online)

    • DOI

      10.1007/s11071-013-0847-2.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] System modeling and tracking control of mobile manipulator subjected to dynamic interaction and uncertainty2013

    • 著者名/発表者名
      Guoliang ZHONG, Yukinori KOBAYASHI, Yohei HOSHINO and Takanori EMARU
    • 雑誌名

      Nonlinear Dynamics

      巻: 25(published online)

    • DOI

      10.1007/s11071-013-0776-0.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Active Vibration Suppression of Flexible Sprayer-Boom by Sky-Hook with Adaptive Disturbance Cancellation Control Unit2012

    • 著者名/発表者名
      Yohei HOSHINO, Kyohei KATAYAMA, Yukinori KOBAYASHI, Yohsuke NAKANISHI and Takanori EMARU
    • 雑誌名

      Journal of System Design and Dynamics

      巻: Vol. 6, No. 3 ページ: 251-262

    • DOI

      10.1299/jsdd.6.251.

  • [雑誌論文] Sky-Hook with Adaptive Disturbance Cancellation Control for Flexible Structures with an Active Vibration Control Unit2012

    • 著者名/発表者名
      Yohei HOSHINO, Kyohei KATAYAMA, Yukinori KOBAYASHI, Takanori EMARU and Yohsuke NAKANISHI
    • 雑誌名

      Journal of System Design and Dynamics

      巻: Vol.6, No.5 ページ: 626-640

    • DOI

      10.1299/jsdd.6.626

    • 査読あり
  • [雑誌論文] アクティブ制振ユニットによる柔軟構造物の適応スカイフック-外乱相殺併合制御2012

    • 著者名/発表者名
      星野洋平, 片山恭平, 小林幸徳, 江丸貴紀, 中西洋介
    • 雑誌名

      日本機械学会論文集(C編)

      巻: Vol.78, No.789 ページ: 1485-1496

    • DOI

      10.1299/kikaic.78.1485

    • 査読あり
  • [学会発表] 重心のずれに対する全方位移動ロボットの速度制御2013

    • 著者名/発表者名
      イジョンヒョク,江丸貴紀,星野洋平,小林幸徳
    • 学会等名
      第45回計測自動制御学会北海道支部学術講演会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌市)
    • 年月日
      20130306-20130307
  • [学会発表] ディジタル加速度制御則を用いたロボットアームの質量推定2013

    • 著者名/発表者名
      今岡広一,江丸貴紀,小林幸徳,星野洋平
    • 学会等名
      第45回計測自動制御学会北海道支部学術講演会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌市)
    • 年月日
      20130306-20130307
  • [学会発表] 柔軟ロボットアームによる高効率投球動作に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      山川量平, 小林幸徳, 蓋 軼之, 星野洋平, 江丸貴紀
    • 学会等名
      第13回システムインテグレーション部門講演会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
    • 年月日
      20121218-20121220
  • [学会発表] サスペンションを有する移動ロボットのセミアクティブ振動制御2012

    • 著者名/発表者名
      山本良祐, 小林幸徳, 江丸貴紀, 星野洋平
    • 学会等名
      第13回システムインテグレーション部門講演会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
    • 年月日
      20121218-20121220
  • [学会発表] ディジタル加速度制御による片持ちはりの振動制御2012

    • 著者名/発表者名
      今岡広一, 江丸貴紀, 星野洋平, 小林幸徳
    • 学会等名
      第13回システムインテグレーション部門講演会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
    • 年月日
      20121218-20121220
  • [学会発表] Slope Detection based on Orthogonal Assumption2012

    • 著者名/発表者名
      Jixin LV, Yukinori KOBAYASHI, Yohei HOSHINO and Takanori EMARU
    • 学会等名
      2012 IEEE/SICE International Symposium on System Integration
    • 発表場所
      Kyushu University (Fukuoka, Japan)
    • 年月日
      20121216-20121218
  • [学会発表] Intuitive Teleoperation of Nonholonomic Mobile Robot with a Manipulator Based on Virtual Reality and WIFI2012

    • 著者名/発表者名
      Gouliang ZHONG, Yukinori KOBAYASHI, Yohei HOSHINO and Takanori EMARU
    • 学会等名
      International Conference on Information Science and Control Engineering
    • 発表場所
      Vienna Hotel (Shenzhen, China)
    • 年月日
      20121207-20121209
  • [学会発表] Performance Improvement of PID-DAC-Nonlinear-Compensator by Applying Online System Identification2012

    • 著者名/発表者名
      Takanori Emaru, Hiroto Sasaki, Yohei Hoshino, Yukinori Kobayashi
    • 学会等名
      2012 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications
    • 発表場所
      Gran Melia Victoria (Majorca, Spain)
    • 年月日
      20121020-20121026
  • [学会発表] Trajectory Tracking of Wheeled Mobile Robot with a Manipulator Considering Dynamic Interaction and Modeling Uncertainty2012

    • 著者名/発表者名
      Guoliang ZHONG, Yukinori KOBAYASHI, Takanori EMARU and Yohei HOSHINO
    • 学会等名
      The 5th International Conference on Intelligent Robotics and Applications
    • 発表場所
      Concordia University (Montreal, QC, Canada)
    • 年月日
      20121003-20121005
  • [学会発表] Application of Singular Value Decomposition in Robot Map Building2012

    • 著者名/発表者名
      Ankit A. RAVANKAR, Yohei HOSHINO, Takanori EMARU and Yukinori KOBAYASHI
    • 学会等名
      The 30th Annual Conference of the Robotics Society of Japan
    • 発表場所
      Sapporo Convention Center (Sapporo, Japan)
    • 年月日
      20120917-20120920
  • [学会発表] Dynamics Modeling and Trajectory Planning of Wheeled Mobile Robot Having a Manipulator2012

    • 著者名/発表者名
      Guoliang Zhong, Yukinori Kobayashi, Takanori Emaru and Yohei Hoshino
    • 学会等名
      the 43rd International Symposium on Robotics
    • 発表場所
      Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall (Taipei, Taiwan)
    • 年月日
      20120829-20120831
  • [学会発表] ディジタル加速度制御系に基づく非線形補償器の提案2012

    • 著者名/発表者名
      大熊雅史, 江丸貴紀, 星野洋平, 小林幸徳
    • 学会等名
      日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門講演会
    • 発表場所
      アクトシティ浜松(浜松市)
    • 年月日
      20120527-20120529

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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