本研究の目的は,汎用スイッチング電源に対し,ディジタル制御方式を導入することにより知能化した新しい汎用電源システムを開発することである。ここでは,パワーエレクトロニクスとアナログ電源技術に先進ディジタル制御技術を導入し統合化することにより,高性能かつ高機能な知能化した汎用電源を,低消費電力でかつ低コストに実現する。この目的に対して,本年度は以下に述べる研究課題を実施した。 AD/DA分解能に起因する出力電圧のリミットサイクル振動に対し,入力電圧変動と負荷抵抗変動が生じても常にその振動が最小となる,ロバストなディジタル制御法を提案しているが,本年度は提案制御法の制御アルゴリズムをFPGAに実装し,その有効性を実機により定量的に検証した。 また,ここでは電源性能として要求される電圧精度(分解能)に基づき,ディジタル制御で必要となるAD/DA分解能と,制御演算における固定少数演算分解能を性能を満たす範囲でコストが最小となるよう,一意に決定する手法を併せて実現し実験によりその有効性を示した。 多チャンネルのマルチレベル電圧制御に対しては,部分空間法に基づく多入出力同定法と多入出力系に対する外乱オブザーバ付き内部モデル制御法(DIMC)提案しているが,このディジタル制御法に対しても,FPGAに実装しその有効性を実験により検証した。さらにDIMCに対しては適応制御法を導入し,入力電圧変動や負荷変動の時変特性,AD/DA分解能誤差,スイッチングによる電圧制御という非線形性に対して,制御性能劣化を適応的に補償する手法を提案した。本手法の有効性も実験により検証している。
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