研究課題/領域番号 |
23760384
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
畑中 健志 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (10452012)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | センサネットワーク / 協調推定 / 協調制御 / 分散最適化 / 受動性 |
研究概要 |
本研究課題はビジュアルセンサネットワークを対象とし,ターゲットの動きを推定する分散協調推定アルゴリズムの提案を主目的とするものである.特に,(i)提案アルゴリズムによる推定精度の定量化,(ii) ターゲットの動きの影響の定量化,(iii) 故障耐性の解析 (iv) 実験システムの構築に取り組むとし,初年度となるH23年度は(i)および(iv)の課題への取り組みを予定していた.まず,課題(i)に関しては,当初の想定通り,これまでの申請者らの研究である視覚オブザーバの理論と同期制御の理論を併合することで協調推定アルゴリズムを提案し,その推定精度をローカルな推定値の平均化性能と解釈することで,その通信構造やカメラ数の関係を明らかにすることに成功した.この結果は,国際会議2011 American Control Conferenceに採択され,Best Presentation賞を受賞し,国内論文誌にも採録・掲載された.次に,ここでの結果を拡張し,課題(ii)に対する解析も行い,理論結果の導出に成功した.この結果は50th IEEE Conference on Decision and Controlに採択された.なお,ここまでの結果は保守性の強い不満足な結果であったが,更なる解析の結果,よりシャープな理論結果を導出することに成功し,(i), (ii)をまとめて,現在国際雑誌に論文投稿中である.また,課題(iv)については,分散型のビジュアルセンサネットワークシステムの構築に成功し,上記の論文は全て本システムを用いた検証実験を含むものとなっている.加えて,実験システムのみに焦点を当てた論文も国際会議にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず当初予定した課題(i)に関しては,予定通り理論結果の導出に成功し,ここまでの結果で既に国際会議論文・国内論文誌に採択されたことは当初の計画を上回るものである.加えて,そのうち国際会議発表時にはBest Presentation賞を受賞したこともこのような評価を下した一因である.つぎに,課題(ii)は次年度に取り組みを予定していたものの,課題(i)が速やかに解決したこともあり,本年度中に結果を導出することに成功した.さらに,その結果は当該分野における最高峰の国際会議に採択されるなど,一定の評価を得た.以上は当初は予定しなかった成果である.また,国際論文誌投稿中の最新の結果は,課題(ii)の内容が課題(i)の内容の一般化となるという,当初の目論見を上回るシャープな結果であり,先日受け取った査読コメントの評価も悪くないものであった.ただし,最終的な結果は審査中につき未定である.さらに,これも当初は次年度用の課題として予定していた課題(iii)にも着手することができ,一定の成果をあげられたこともこのような評価を下した要因である.また,課題(iv)の実験システム構築については,予定通り集中型のシステム構築を早期に完成させ,さらに当初は次年度への持越しを想定した分散型システムの構築にも本年度内に取り組むことができた.そこでは,処理の分散化に成功し,学術的にも本件のみをもって国際会議発表を行うなどの成果が得られた.以上より,当初の計画以上に進展している,と結論付ける.
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今後の研究の推進方策 |
課題(iii)については,ターゲットがいくつかのカメラの可視領域を外れることを想定した理論の構築に取り組み,現在国際会議への投稿準備中であるが,ターゲットが動く場合の解析は行っておらず,実験検証も未着手である.加えて,通信障害等の理論解析も不十分である.また当初予定したとおり,実験システムの拡充として,全方位ミラーを利用したシステム構築に取り組む.以上より,次年度は課題(iii)および(iv)の実験システムの拡充を中心に取り組む.(iii)に関しては,本年度中に基礎となる理論結果の導出に成功したため,その一般化が課題となるが,これはちょうど課題(i)から(ii)への発展と対応するため,その際に利用した手順を踏むことで実現できると考えている.実験システムの拡充に関しては,まずは全方向ミラーを購入し,それを用いたシステムの構築に着手する.これは画像処理プログラム部分のみの改修であるため,早期の完成が見込まれる.以上の成果を全て論文としてまとめて国際ジャーナルへ投稿すること,また本年度以上に国内外の会議で発表するなど広報活動に努めることも次年度の課題である.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず,当初の計画通り,実験システムの拡充のために,できるだけ早期に全方位ミラーを購入する.ただし,交付額の申請額との差を考慮して台数を4台から3台に変更する.また,既に投稿中の国内論文誌の別刷り料を支払う.さらに,研究成果の広報を目的として,本年度よりも多くの国内外会議に参加する.具体的には,2度の国際会議と3度の国内会議への参加を予定している.
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