研究課題
本年度は,基礎的な理論研究として,(1) 確率切替システムのモデリング,(2) 確率ハイブリッドシステムの確率的拘束付き最適制御に取り組んだ.以下,それぞれの項目を説明する.(1) 確率切替システムのモデリング:確率切替システムとは,マルコフ連鎖に従ってダイナミクスが切り替わるシステムであり,確率ハイブリッドシステムのサブクラスである.バイオシステムやネットワーク化制御など幅広い応用が可能である.本研究では,不確かさを含む確率切替システムを混合論理動的システムで表現する方法を提案した.まず,状態の期待値の再帰的な表現を提案した.既存手法では,制御入力を含まない自律系のみを議論していたが,本研究では制御入力を含む場合の一般的な結果を導出した.さらに,再帰的な表現を基に,混合論理動的システムで表現する方法を導出した.また,ネットワーク化制御への応用も数値例を用いて議論し,提案手法の有用性を示した.(2) 確率ハイブリッドシステムの確率的拘束付き最適制御:確率的拘束(例えば,拘束を満足する確率が90%以上)を満足する最適制御入力を計算する方法を提案した.具体的には,危険状態の領域を定義し,その領域に到達する確率をある値以下にする制御入力を列挙する方法を提案した.この方法は,部分的な離散抽象化を行っていることに相当することから,一般の離散抽象化の基礎になると考えられる.また,列挙された制御入力は線形不等式として表現できることから,最適制御問題に容易に組み込むことが可能である.さらに,本研究では数値例により有効性を示した.
2: おおむね順調に進展している
今年度取り組んだ確率切替システムのモデリングは,確率ハイブリッドシステムのモデリングの基礎である.したがって,研究目的を達成するために重要な基礎となっている.また,同様に,今年度取り組んだ確率的拘束付き最適制御の計算方法は,離散抽象化の基礎となっており,やはり研究目的の達成に必要不可欠な結果である.以上から,計画通りに進展していると考えられる.
国内の研究会に積極的に参加・発表することで,多くの研究者から意見をいただけることが期待できる.また,自分の分野にとらわれず,幅広い分野の研究会に参加していくことで,広い視点をもって研究を推進していく.また,国際会議にも積極的な参加・発表することを検討していく.最新の研究動向を把握するためには,国際会議への参加は必要不可欠である.海外の研究者との交流を深めることは,研究を推進していく上で,非常に重要である.さらに,制御工学や最適化に関する書籍を購入し,基礎的内容を把握することにも努めていく.
以下の使用計画を考えている.・国内の研究会の旅費および参加費:5~6回を考えている.電子情報通信学会システム数理と応用研究会,計測自動制御学会離散事象システム研究会,システム制御情報学会学術講演会などの研究会への参加を検討している.・国際会議の旅費および参加費:1~2回を考えている.IEEE関係の国際会議への参加を検討している.・書籍の購入:5~6冊を考えている.制御工学や最適化関係の書籍の購入を検討している.・学術論文の別刷代:1~2編を考えている.投稿先は検討中である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (19件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: Vol. E95-A, No. 4 ページ: 691-696
Discrete Event Dynamic Systems: Theory and Applications
巻: Vol. 21, No. 4 ページ: 519-545
計測自動制御学会論文集
巻: Vol. 47,No. 11 ページ: 520-526
巻: Vol. 47,No. 12 ページ: 614-620