研究課題
本年度は当初の計画通り,確率ハイブリッドシステムの離散抽象化に関する研究に取り組んだ.ハイブリッドシステムとは,微分/差分方程式に代表される連続ダイナミクス,有限オートマトンに代表される離散ダイナミクスが混在した動的システムのクラスである.本研究では,離散ダイナミクスに確率的振る舞い(機械の正常/故障など)を付加したシステムを,確率ハイブリッドシステムとして扱っている.確率ハイブリッドシステムでは,解析や制御の計算が困難な場合が多いことから,離散抽象化の研究に取り組んだ.離散抽象化とは,システムの状態空間を有限個の集合に分割し,これらの集合間の遷移によって,システムの振る舞いを表現する方法である.元のシステムの振る舞いを何らかの意味で保存する離散抽象化モデルを用いることで,解析や制御の計算は容易になる.しかしながら,従来の双模倣に基づく離散抽象化手法では,計算手続きの停止性が保証されていない.そこで,指定した有限時間区間のみの振る舞いを考える有界双模倣の概念を提案した.有限時間区間のみを考えることから,計算手続きの停止性を保証することができる.本研究では,有界双模倣に基づく離散抽象化手法の計算手順を導出し,数値実験による有効性の検証を行った.さらに,遺伝子トグルスイッチの解析への応用も検討した.遺伝子トグルスイッチとは,電気回路におけるトグルスイッチを生体内現象で再現した人工遺伝子回路の一種である.タンパク質の濃度に応じてスイッチングすることから,ON/OFFのしきい値を設計することは重要である.本研究では,離散抽象化を用いて,指定したON,OFFのパターンが実現できるかどうかを検証した.
2: おおむね順調に進展している
本年度は当初の計画通り,確率ハイブリッドシステムの離散抽象化に関する研究に取り組んでおり,計画通りに進展していると考えられる.確率ハイブリッドシステムの離散抽象化は,確率ハイブリッドシステムの理論を実用化する際の課題を解決する重要な手法であり,本研究課題の目的達成に大きく寄与している.
確率ハイブリッドシステムは様々な応用が期待されることから,幅広い分野の研究会に参加し,広い視点をもって研究を推進していく.例えば,制御工学だけでなく,バイオインフォマティクスや計算機科学などの研究会への参加を検討していく.また,国際会議(例えば,IEEE Conference on Decision and Control,CPS WEEKなど)にも積極的な参加・発表することを検討していく.最新の研究動向を把握するためには,国際会議への参加は必要不可欠である.さらに,書籍を購入し,関連分野の基礎的内容を把握することにも努めたい.
国際会議および国内の研究会に参加するための旅費,および書籍の購入を考えている.また,学術論文の別刷代として使用することも考えている.具体的には,以下の使用計画を考えている.・国内の研究会の旅費および参加費:5~6回を考えている.電子情報通信学会システム数理と応用研究会,計測自動制御学会離散事象システム研究会,システム制御情報学会研究発表講演会などの研究会への参加を検討している.・国際会議の旅費および参加費:1~2回を考えている.IEEE関係の国際会議への参加を検討している.・書籍の購入:5~6冊を考えている.計算機科学や生物学の書籍の購入を検討している.・学術論文の別刷台:2~3編を考えている.投稿先は検討中である.
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (17件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: Vol. E96-A, No. 2 ページ: 532-539
IET Systems Biology
巻: Vol. 6, No. 6 ページ: 215-222
International Journal of Control, Automation, and Systems
巻: Vol. 10, No. 5 ページ: 897-904
Journal of Process Control
巻: Vol. 22 , No. 9 ページ: 1670-1680
巻: Vol. E95-A, No. 9 ページ: 1512-1517
SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
巻: Vol. 5, No. 3 ページ: 184-189