研究課題/領域番号 |
23760389
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥田 裕之 名古屋大学, グリーンモビリティ連携研究センター, 特任助教 (90456690)
|
キーワード | 行動モデル / ハイブリッドシステム |
研究概要 |
本年度は自動車運転中のドライバの行動に対して行動解析を行うためのツールとして,新しい行動モデルの理論的な整備を行った. 一般に,行動の数理モデルを構築する際には,そのモデルの入力となる変数を如何に必要十分に選択するかが第一の鍵となる.研究者は,データクラスタリングの技術に基づく行動の階層的モデル構築に取り組んできたが,本手法が対象とする,多様な状況を含むような行動データをモデル化する際には特にこの変数選択が問題となる.すなわち,状況が変化するにつれて必要となる入力変数が異なる場合がある.例えば,追い越し時には右レーンを走行する車両までの車間距離が必要だが,前方車を追従するに当っては不要となる場合等である. このような問題に対して,本年度の研究では可変変数型区分線形モデルを提案し,理論的整備を行った.本モデルは,複数の線形モデルを内部に持ち,それらを状態の部分空間毎に割り当て,切り替えながら時間発展するモデルである. 本年度は,上記モデルの提案に加え,その同定手法をも確立した.本モデルを同定するにはまず,一連の状況で必要となりうる大規模な変数集合をあらかじめ用意しておき,ある時刻t付近の局所的なダイナミクス,すなわちドライバの行動を表現する入出力関係において不要となる変数を,情報量基準を基に取捨選択することで,時刻t付近にいおてドライバが使用している変数を抽出する.その後に,これらの利用変数を元に一連の行動を分節化することで,分割された各モードごとに異なる入力変数を用いた線形モデルを同定することが可能となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における本年度の研究予定としては,階層的行動モデルを構築する際に最も問題となる,モデルの説明変数選択への依存性について検証し,現象(本研究では人間の運転行動)を説明するために不可欠な説明変数を自動的に抽出する手法を模索することであった. 本年度の研究では,このような問題に対して,説明変数を状況に応じて切り替えながら現象を説明できる新しいモデル,すなわち可変変数型区分線形モデルを新たに提案し,数理的に整備した.また,一連の行動データのみから,提案したモデルに包含される説明変数の選択,および説明変数の寄与度,すなわち回帰係数の双方を同時に推定するためのシステム同定手法を確立できた.また,数値実験によりそのシステム同定手法の有効性を示すことができた.以上のことから,本年度の研究により本研究はおおむね計画通りに進捗していると自己評価する.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した行動モデルの有用性を検証するために,ドライビングシミュレータや実車(小型の電気自動車)を用いた行動データの観測実験を行い,人間による運転行動のデータを取得する. また,これまでに確立した行動モデルの構築手法を駆使し,取得したデータから行動モデルを構築し,行動モデルに基づく行動の解析や,得られた行動モデルを用いたドライバへの支援装置設計手法や,行動の特徴,ならびに特性に基づいた車両インタフェース設計手法の確立を目指し研究を進める予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
行動データの観測のための実験設備の改修や,保守のために,各種部品や計測機器,インターフェース機器等を購入する予定がある.実験設備の改修,拡張作業が進み次第,本研究補助を用いて被験者を募集したのち,シミュレータ,ならびに電気自動車を用いた走行実験を試行する予定である. また,取得したデータを保管するためのデータストレージが必要である.さらには,取得,蓄積したデータを解析し,行動モデルを構築するために,計算機の購入,整備や,データ処理に用いるソフトウェアの購入,およびライセンス料の支払いが必要であり,これらのために使用する予定である.
|