研究課題/領域番号 |
23760396
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小林 義光 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40509270)
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キーワード | 制御システム / 磁気浮上搬送 / 三次元位置推定 / オブザーバ |
研究概要 |
本研究の目的は,磁気浮上搬送制御に利用可能な三次元位置推定方法およびその推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した設計方法を確立することであり,本研究の特徴として,電磁石の電流値と磁極部に配置したホール素子の電圧値の情報を用いて,浮上・搬送制御に有効な三次元位置を推定するものである.当該年度では,2個のホール素子による2次元(鉛直・水平方向の)位置推定を用いた水平1軸方向に対する磁気浮上搬送系の制振・搬送制御の実現および平成23年度に構築した4個のホール素子による3次元位置推定を用いた制振制御(搬送制御は未実装)の実現した. 水平2軸方向の制振・搬送制御を実現するための予備実験として,ホール素子2個による2次元(鉛直・水平方向の)位置推定を用いた水平1軸方向への制振・搬送制御の構築を実施した.浮上物体の制振とスライダの搬送制御を両立させるため,本研究では2自由度積分型最適サーボ系の適用した.この制御系は,基本的に最適サーボ系による制振制御を実現し,搬送中の外乱やモデル化誤差によって,搬送制御の目標速度軌道から外れた場合のみ,独立に積分補償が動作することによって,速度追従性を確保するものである. 数値計算と実験結果より,水平1軸方向に対して,2自由度積分型最適サーボ系を適用した磁気浮上搬送系の有効性を示した. 水平2軸方向の制振・搬送制御の実現に拡張するため,水平2軸ステージの動特性および4個のホール素子の関係式を含めた磁気浮上搬送系の3次元数学モデルを導出し,3次元位置推定を用いた3次元位置制御(鉛直浮上制御および水平制振制御)の実現を理論と実験により明らかにした.課題としてモータノイズの影響により,制振制御が振動的になるため,ノイズ対策による制振性の向上が挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,磁気浮上搬送制御に利用可能な三次元位置推定方法およびその推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した設計方法を確立することであり,計画している具体的な研究解題は,①三次元位置変化におけるホール電圧分布の計測と関係式の導出,②浮上時の安定性を確保した三次元位置推定の設計と実験評価,③推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した制御設計と実験評価,の3つである. 研究課題①の三次元位置変化におけるホール電圧分布の計測と関係式は平成23年度に実施済みであり,当該年度の計画としては,研究課題②はホール素子の関係式の近似誤差を制御系の安定余裕を大きく確保することで補う方法を提案し,理論と実験により有効性を示すことが実施できた.しかし,ノイズの影響を低減させるような制御設計を未実施であり,引き続き課題として残った.また,搬送制御においては,水平2軸方向の搬送実験の環境を構築し,制御系として搬送制御と振れ止め制御を同時に実現する2自由度制御系を設計し,三次元位置推定の水平2軸方向の推定値が,搬送時の振れ止め制御に有効であることを実験と理論によって検証することを計画し,磁気浮上搬送系に2自由度積分型最適サーボ系を適用して,水平1軸方向の制振・搬送制御を実現した.また,水平2軸方向の搬送制御が未実施であるが,水平2軸方向の制振制御は実現できた.研究課題③は,鉛直方向に可動するための1軸ステージを追加し,磁気浮上系の鉛直移動を実現した. 以上より,当初の計画通り研究課題①を実施済みで,研究課題②および③も進めることができたが,研究課題②のノイズ対策と水平2軸方向の制振・搬送制御の実現が課題として残ったため,達成度としては,「おおむね順調に進展している」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,磁気浮上搬送制御に利用可能な三次元位置推定方法およびその推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した設計方法を確立することであり,今後の研究としては,平成25年度には,まず平成24年度に得られた結果を学会発表および論文投稿し,研究課題②のノイズ対策および水平2軸方向に対する磁気浮上搬送系の制振・搬送制御の実現に取り組む計画である. 平成25年度の研究計画課題③では,独立に設計する浮上制御と搬送制御がどのように影響を与えるかを検討し,また同時に設計問題を考えることで,制御性能の向上が得られるかを理論と実験により検討する.また,磁気浮上搬送系の鉛直移動を追加することで,磁気浮上搬送系の3次元移動の実現を計画する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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