入出力間にある種のタイムラグを有する物理系として状態依存むだ時間系がある.ネットワークの輻輳制御問題や生物学における個体数変動モデル,経済学における市場価格変動モデル,材料学における結晶成長過程モデルなどは状態依存むだ時間系として記述できる例として,それら物理系の解析や制御を目的とした手法の検討が求められている. 本研究では,この状態依存むだ時間系の安定判別法や制御法,状態推定法等を制御理論の観点から構築することを目的とし,このうち,この系の一近似モデリング手法を与え,それに基づく状態推定法の有効性を数値例によって示した.具体的には,信号の跳ね返りを利用して自己の位置制御を行うある種の自己位置制御系を対象にとりあげ,その現在位置の推定法についての考察を行った.信号の速度および送受信にかかる時間をもとに自己位置を算出するため,その動作状況に依って現在位置の推定が正確に行えないといった問題があったが,過去の系の状態保存とその系の動特性を考慮したオブザーバ設計により,より正確な状態推定が行えることを数値シミュレーションにより示した. しかし,予定していた学術雑誌への論文投稿が遅れており,今後,鋭意努力してこの結果をまとめたい.
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