研究課題/領域番号 |
23760400
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
井上 真澄 北見工業大学, 工学部, 助教 (00388141)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 有機繊維 / 混和材 / コンクリート / 寒冷地 / 耐凍害性 |
研究概要 |
本研究では、高機能な有機繊維の利用に着眼し、高い耐久性を有する寒冷地対応型コンクリートの開発を目的としている。同時に、各種混和材料と併用することにより、コンクリートの緻密化等による凍害単独および凍害と塩害との複合劣化に対する耐久性向上と、有機繊維材料によるひび割れ抑制効果によりコンクリート自体の高耐久化を目指す。今年度は、各種の有機繊維材料および混和材を用いたコンクリートの耐凍害性を明らかにすることを目的として、淡水および海水を試験水として用いた凍結融解試験を実施した。有機繊維には、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維を対象とし、繊維の混入率はコンクリートの剥落防止や収縮ひび割れ抑制を目的として使用する場合の標準添加量を中心として検討した。また、混和材としては、コンクリートの緻密化による耐久性への効果が期待される高炉スラグ微粉末の利用に着眼し、各材料の単独使用および併用した場合の耐凍害性について比較検討を行った。その結果、各種有機短繊維および高炉スラグ微粉末を少量混入したコンクリートの凍結融解試験終了時の相対動弾性係数は普通コンクリート同等以上であり、高炉スラグ微粉末を混入した配合においては、海水使用時において耐凍害性の改善効果が確認された。また、凍結融解試験終了時点の質量減少率や外観観察におけるスケーリング性状は、普通コンクリートと同程度であり、繊維や高炉スラグ微粉末の混入による明確な影響は観察されなかった。一方で、より高い耐久性を得ることを目的として、有機繊維材料を標準添加量の5~6倍程度多量に配合したコンクリートについて検討した結果、スケーリング性状に明確な改善効果が得られるものの、相対動弾性係数が大幅に低下する傾向にあった。繊維を多量添加した場合、練混ぜ時のフレッシュ性状に悪影響があり、良質なエントレインドエアが消失したことがこの原因と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度において、有機短繊維を少量添加(ひび割れ抑制および剥落防止を目的とした場合の標準使用量)し、高炉スラグ微粉末を併用した場合のコンクリートの耐凍害性への影響を明らかし、凍結融解作用下における強度やスケーリング性状についての知見を得た。しかし、その効果は明確なものとは言えず、有機短繊維の添加量によっては強度やスケーリング性状への影響度が異なることが予想される。現時点では、本研究の目的とする高い耐久性を有する寒冷地対応型コンクリートを実現する最適な有機繊維材料の選定や最適混入率、混和材との組合せを得るには至っていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究成果を踏まえると、コンクリートの耐凍害性を高める方策として、有機繊維材料の添加量を増加させ、より詳細に設定したケースにおいてコンクリートの耐凍害性を明らかにする必要がある。ただし、これまでの研究において、有機短繊維をある一定量以上添加した場合には、フレッシュ性状を阻害し、さらに硬化後のコンクリートの気泡間隔係数に悪影響を与えることが明らかとなっている。そこで、今後は有機短繊維の添加量を増加させるとともに、詳細に添加量を設定したケースについてフレッシュ時の練混ぜ特性や硬化後のコンクリート中の空隙構造に及ぼす影響を明らかにする必要がある。その上で、各種混和材との併用効果を明らかにし、寒冷地対応型コンクリートの配合設計手法の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種有機繊維材料と各種混和材を併用した寒冷地対応型コンクリートの配合設計手法を確立すべく、供試体作製に必要な材料費や型枠費など、実験に必要な消耗品費を執行する。また、関連分野の最新の技術や学術情報を得るため学協会への参加旅費、研究成果について国内外の主要な学協会での論文発表に要する論文投稿料や発表旅費などを執行する。
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