本研究では、高機能な有機繊維の利用に着眼し、高い耐久性を有する寒冷地対応型コンクリートの開発を目的とした。同時に、各種混和材料と併用することにより、コンクリートの緻密化等による凍害単独および凍害と塩害との複合劣化に対する耐久性向上と、有機繊維材料によるひび割れ抑制効果によりコンクリート自体の高耐久化を目指した。最終年度は、ビニロン短繊維を用いて繊維混入率を変化させ、さらに混和材として高炉スラグ微粉末(比表面積6000cm2/g)を用いて、各材料の単独使用および併用した場合の耐凍害性について実験的検討を行った。その結果、凍結融解300サイクル終了時点の耐久性指数は、高炉スラグ微粉末混入の有無に関わらず、繊維混入率0.2%以下の範囲では繊維無混入の普通コンクリートと同等であるものの、0.35%以上では耐久性指数が低下する傾向があることを確認した。また、高炉スラグ微粉末を混入したケースでは、無混入に比べて耐久性指数が大きくなり、耐凍害性向上に寄与することがわかった。一方、凍結融解試験終了時点の質量減少率や外観観察におけるスケーリング性状は、作用水として海水を用いたより厳しい凍結融解サイクルを与えた場合に、高炉スラグ微粉末と適量の短繊維を併用することでスケーリングの抑制効果があることがわかった。しかし、高炉スラグ微粉末と併用しても短繊維がある一定以上混入されると耐久性指数は大きく低下する傾向にある。これは、繊維量が多くなるとコンクリートの流動性が低下し、必要以上に減水剤、AE剤等の混和剤添加量が増加する。その結果、耐凍害性の確保に効果のある良質なエントレインドエアの連行を妨げられ、気泡組織に悪影響を及ぼしたことが主な原因と考えられる。
|