平成24年度は,以下のような研究を実施した. 1.RCはりの電食試験:主筋の目標腐食量を10%,30%として電食試験を行い,劣化RCはり作製をした. 2.補修・補強を行ったRCはりの再劣化検証試験:1.で作製した劣化RCはりを対象に断面修復工法による補修,並びに連続繊維シートによる補強を行った.それらについて再度電食試験を実施して鉄筋腐食による再劣化が起こりうる可能性を検証した.供試体のパラメータを目標腐食量,補修の有無,並びに繊維シートの種類として再劣化検証試験を行った.補修の有無をパラメータとしたのは,断面修復によるマクロセル腐食の影響を明らかにするためである.通電終了後,載荷試験を行い,再劣化試験後の耐荷性状について検討を行った.その後,主鉄筋を取り出して腐食量の測定を行った.再劣化の検証試験では,電食試験の電気化学的作用により,主鉄筋の再劣化が促進される可能性があることを明らかにした.さらに,主鉄筋が腐食したRCはりにおいては,母材側の性能回復を適切に施さない場合には,想定外に脆性破壊をもたらすがあることを示した. 3.これまでの実験を対象とした3次元有限要素解析:前年度に試行した解析結果を引き継いで,有限要素法により再現解析を行った.その際,主筋や連続繊維シートの付着劣化の適切なモデル化について試行錯誤を行いながら徹底的に検討した.付着性状は,耐荷性状のみならず,変形性能にも大きな影響を与えるため,有限要素解析において重要なインプットデータとなる.従って,解析モデルの構築では,その検討を重点的に行った.有限要素解析を行った結果,連続繊維シートとコンクリートとの付着性状のみならず,主鉄筋とコンクリートとの付着性状を関連させて考慮する必要があることを明らかにした.
|