研究課題/領域番号 |
23760404
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
蘇 迪 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40535796)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ステレオカメラ / 道路路面状態 / 三次元座標再構築 / 時間位置同期 |
研究概要 |
本システムは,既存道路ストックの健全度を効率的,経済的に把握できる技術を提供し,安全で安心な道路インフラ管理を支援するものである.限られた財源と要員の条件下で,予防保全の実施や道路の延命化による道路資産の資産価値の維持と向上に資する重要な基礎技術と位置付けられる.具体的に,まずステレオカメラで動画像撮影を行い,静止画像を切り出し,それぞれの静止画像から三角測量の要領で路面の三次元座標を再構築する.そして得られた三次元座標同士をつなぎ合わせることで路面プロファイルとする.このシステムの構築に向けて,画像の撮影条件の決定と,三次元座標同士の位置合わせ手法の改善を行った. まず,ステレオ画像からの三次元再構築を舗装路面に適用した例はほとんどないため,再構築の可能性を,その条件とともに明らかにした.具体的には,ステレオ画像のマッチングが可能な探索サブセット領域サイズ,空間解像度を実験的に明らかにした.また,舗装路面や試験体の計測を通して,再構築精度を明らかにした.次に,各ステレオ画像から再構築した三次元座標を互いの重なり部分が整合的であるようにつなぎ合わせるために,Iterative Closest Point 法(ICP 法)を改良して適用した.路面の三次元座標データにはふつう大きな変化が見られないため,ICP法をそのまま適用する場合,局所解に収束し正解に近づかない.そこで,適当な初期条件を与えるために,画像相関法を利用し,ICP 法と組み合わせた.その結果,移動量のごく小さな三次元座標同士の位置合わせを精度よく行うことに成功した.最後にステレオカメラによる動画像撮影は,コンピュータを介して撮影の時間情報とGPSから取得した時間位置情報を自動的に同期する事が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、道路の路面性状の高速で詳細な計測を可能とするステレオ動画撮影とGPSを組合せた道路路面状態の高速診断システムの構築を開発する。この目的として、小型で安価なステレオカメラにより、ステレオ動画の画像処理を用いた三次元デジタルデータの取得はキーポイントである。また、道路管理機関が管理する道路情報は、全て延長座標に基づいて管理されており、道路現状の把握と同様にその位置同定が重要となる。GPSによる位置同定を組合せることにより、効率良く行えるシステムを構築することが可能になる。本年度は、路面画像から三次元座標再構築を行い、路面への適用性を検証した。画像相関法とICP法を組み合わせた手法により、位置合わせの高精度化、効率化を図った。また、ステレオカメラによる動画像撮影開始と同時にGPSの位置情報が撮影画像とともに記憶装置に書き込まれる。自動的に書き込みながら、撮影した道路延長に沿った画像を日時あるいは位置情報を同期することが成功した。しかしながら, ICP によるつなぎ合わせの高速化など改善すべき点があり, 平成24年度の研究で取り組む予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度に開発した路面形状三次元座標データ作成手法を利用して,種々の状態の道路路面を対象として路面形状計測の実証実験を行なう.具体的には,他の路面形状測定法による計測を並行して行い,本研究で利用するステレオ動画像により作成される路面形状三次元座標データと比較することにより測定精度の検証を行う.膨大な量の道路インフラを計測・モニタリングするためには,車載カメラシステムは計測車両を走行しながら長時間にわたり計測を続ける必要がある.現在の計測システムではパソコンのハードディスクだけで,データ容量が十分でないと考えられることから,データの圧縮および外部補助記憶装置を利用して大容量のデータ蓄積が可能な計測システムの改良を行なう.最後,開発するデータベースのデータ索引を利用して,特定地点の特定対象物の相対位置を過去のデータと対比する.道路舗装の性能に変動があったときに警告を出す手段を有する高度化・効率化のシステムの実用化を図る.高速道路と地方道路など種々の道路維持管理基準の照合検証を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度基本設計を行ったデータベースの試作のためのデータベースソフトを購入する計画である.GPSの位置精度を向上のため、高精度GPS装置と開発キットを購入する予定である。また実証実験を行なうため,計測用ノートPC2台を購入する予定である。外部補助記憶装置接続ボードの製作とそのソフト構築にかかる費用,画像計測実証実験にかかる車両,交通、人件費用なども使用する見込みである. 国内会議,国際会議出席,打ち合わせのための旅費,成果を論文に掲載するための論文掲載料も計画している.
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