研究課題/領域番号 |
23760405
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
内田 慎哉 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70543461)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 鉄筋コンクリート / 塩害 / 劣化予測 / 耐力 / 劣化曲線 / モンテカルロ法 / 感度分析 |
研究概要 |
本年度は,これまで申請者が研究を進めてきた,塩害環境下にあるコンクリート部材の力学的性能の予測を対象とした「統計的手法による劣化予測手法」を,実構造物へ適用可能な手法となるように高度化するとともに,実構造物への適用性の検証を行った。また,この予測手法に基づいて,将来の曲げ耐力を精度よく推定するための劣化因子を把握するための感度分析も行った。以下に得られた成果の概要を示す。(1)統計的手法による劣化予測手法の高度化:飛沫帯に設置されたRC部材を対象に,飛沫帯での暴露実験や実構造物の調査結果に基づき劣化因子の確率分布および統計量を見直すことで,劣化曲線の導出手順の再構築および劣化曲線の導出を試みた。導出した劣化曲線から曲げ耐力を推定し,載荷により得られた実際の曲げ耐力との比較も併せて行った結果,両者は比較的良い一致を示した。(2)実構造物への適用性の検証:上記(1)で対象とした部材とは異なる環境条件および部材諸元の複数のRC部材を対象に,上記(1)で高度化した「統計的手法による劣化予測手法」により劣化曲線を導出し,これと載荷によって把握した曲げ耐力とを比較することで,本手法の実構造物への適用性についての検証を行った。その結果,いずれの部材についても,本手法で推定した曲げ耐力と載荷により把握した曲げ耐力は,概ね一致した。(3)感度分析:上記(1)の手法を応用して,塩害劣化進行過程における潜伏期および進展期の期間を求める方法論を提案した。算出した潜伏期および進展期において,RC 部材の各種劣化因子の変動が曲げ耐力の予測に与える影響についての感度分析も行い,期間ごとに,曲げ耐力に与える劣化因子の抽出を行った。その結果,潜伏期の初期段階ではコンクリートかぶり部分の塩化物イオン濃度やその分布の調査が,潜伏期の後期から進展期ではこれらの調査項目に加えて鉄筋の腐食速度の調査も重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であった「統計的手法による劣化予測手法の高度化」および「高度化した劣化予測手法の実構造物への適用性の検証」については,予定どおりすべて完了することができた。また,当初の計画にはなかったが,高度化した劣化予測手法を応用して,塩害劣化進行過程における潜伏期および進展期の期間を求める方法論の開発にも成功した。さらに,算出した潜伏期および進展期において,RC部材の各種劣化因子の変動が将来の曲げ耐力の予測に与える影響についての感度分析方法の提案も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,まず,昨年度高度化された「統計的手法による劣化予測手法」を,同一部材内での塩害による劣化程度の差異を反映させた劣化予測手法となるように改善する予定である。続いて,非破壊試験により推定した結果を用いて劣化因子の確率分布をマルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法などによりベイズ更新し,非破壊試験を適用した時点以降の力学的性能のバラツキを低減した劣化曲線の逐次更新手法の開発も併せて行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,同一部材内での塩害による劣化程度の差異を反映させた劣化予測手法を構築する上で必要となる非破壊試験として,電磁パルス法の定電流定電圧装置および励磁コイルの改善を行う。加えて,複数個の振動センサを設置して弾性波の同時計測を行なうための波形収集装置を購入する予定である。旅費としては,情報収集に加えて,初年度の研究成果を発表するための旅費をそれぞれ考えている。文献調査や実験補助(データ整理を含む)要員への謝金も併せて計上している。
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