本年度は,まず,昨年度に構築した「統計的手法による劣化予測手法」を用いて,実橋から切り出した塩害劣化したRC部材に対する適用可能性を検証した。次に,非破壊評価により得られた結果を追加情報としてベイズ更新することで,導出した劣化曲線を更新する「非破壊評価技術を援用した劣化予測手法」の開発も行った。さらに,塩害劣化進行過程における各劣化過程(潜伏期,進展期,加速期および劣化期)を予測する手法の提案も併せて実施した。以下に得られた成果の概要をそれぞれ示す。 ①「統計的手法による劣化予測手法」の実橋に対する適用可能性:塩害劣化した切り出しRC部材に対して,その部材諸元,環境条件および非破壊試験などの調査結果からモンテカルロシミュレーション解析でRC部材の曲げ耐力を予測した。その結果,本手法は,実橋に対する適用可能性があることが明らかとなった。 ②「非破壊評価技術を援用した劣化予測手法」の開発:「統計的手法による劣化予測手法」により導出した劣化曲線に対して,非破壊試験結果をインプットデータとする構造解析により現有曲げ耐力を求める手法により推定した耐力を用いてベイズ更新することにより,曲げ耐力に関する劣化曲線を精緻化する方法論を構築した。 ③「塩害劣化進行過程の予測手法」の提案:「統計的手法による劣化予測手法」を活用し,まず,鉄筋の腐食開始時刻,腐食ひび割れ発生時刻および加速期終了時刻を算出する方法を検討した。続いてこの結果に基づき各劣化過程の期間(潜伏期,進展期,加速期および劣化期)をそれぞれ推定するとともに,供用年数に対する各劣化期間の推移を求める方法を提案した。
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