研究課題/領域番号 |
23760408
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
大野 健太郎 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (80571918)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 弾性波法 / ひび割れ検出 / 弾性波速度 / 卓越周波数 / 振幅減衰率 |
研究概要 |
弾性波法によるコンクリート表層部のひび割れ検出性能を検討するため、実験室内で人工欠陥を埋設した小型供試体(150×100×600mm)を作製し、弾性波法を適用した。弾性波の検出にあたり、共振型センサと広帯域型センサにより弾性波を検出し、弾性波速度、卓越周波数、振幅減衰率を指標として評価した。また、小型供試体(100×100×400mm)に4点曲げ試験にて曲げひび割れを導入し、弾性波法の適用性を検討した。その結果、人工欠陥を埋設した供試体では、共振型センサを用いて弾性波速度を評価対象項目とした場合、人工欠陥の有無を明確にすることが可能となった。また、卓越周波数による評価では、センサ特性に卓越周波数が依存し、人工欠陥の有無を評価することが困難であった。振幅減衰率では、人工欠陥の有無を評価可能であるが、弾性波速度による評価の方が好ましいことがわかった。 次に、曲げひび割れを導入した供試体においては、弾性波速度を評価指標とした場合、共振型および広帯域型センサにおいてひび割れ検出が可能であることがわかった。卓越周波数による評価では、人工欠陥を埋設した供試体の結果と同様に、センサ特性の影響が卓越し、ひび割れ評価は困難であった。また、振幅減衰率による評価では、高周波の共振型センサにおいて、ひび割れの検出が可能であることが分かった。 人工欠陥および曲げひび割れを導入した供試体の結果から、曲げひび割れの方が人工欠陥よりもひび割れ幅が小さく、深さは深いことから、弾性波速度の低下程度は、ひび割れ幅よりもひび割れ深さの影響を受けることが推察された。 上記の内容は、現在、第67回土木学会年次学術発表会および第4回コンクリート構造物の非破壊検査シンポジウムに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、弾性波法によるコンクリート表層部のひび割れ検出に関する基礎的検討として、人工欠陥を有する小型供試体および曲げひび割れを導入した小型供試体での実験、考察を進めてきた。これらの検討は、比較的計画通りに行え、妥当な結果を得ることができた。ただし、本手法の根幹である弾性波の励起について、検討の余地が残された。つまり、現在、弾性波の励起は、シャープペンシル芯圧折法により行っているが、作業者および作業環境、入力角度により励起される弾性波の振幅値、周波数が変わることがわかった。実構造物への適用や信頼性の高い結果を得るためには、安定した弾性波の励起が必要であり、平成24年度は、弾性波の励起に関する検討を追加する必要があると考えられる。 平成24年度は、大型供試体での検討および実構造物への適用性を柱に研究を進めるつもりであったが、上記の安定的な弾性波の励起法に関しても詳細に検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
実験室での小型供試体による評価では、共振型センサを用いてP波速度を評価指標とすることで、コンクリート表層部のひび割れ検出が可能であることが示された。ただし、小型供試体の場合、センサで検出される弾性波の減衰は比較的小さく、P波初動部を読み取ることが容易であった。しかし、実際の構造物においては、センサ設置間隔が大きくなり、P波初動部がノイズ成分に埋もれることが懸念される。このことを踏まえて、次年度は、人工欠陥を埋設した大型供試体による検討や実際の構造物への適用性について検討を進める。さらに、安定した弾性波の励起が行えない場合、すなわち、作業者の違いや、弾性波の入力角度の違いにより励起される弾性波の振幅値や周波数が変化し、得られる結果に影響を及ぼすことが昨年度の検討の結果わかった。そのため、次年度は、安定的な弾性波励起方法に関する取り組みが必要である。実験としては、安定した弾性波の入力を行うため、入力には、ファンクションジェネレータを使用し、大型供試体における欠陥検出の精度や適用範囲を明確にする。対象とする大型供試体は、名古屋大学に設置してあるニューブリッジ(人工欠陥を埋設した橋台、長さ6m、高さ2m)を予定している。計測対象として、弾性波法を適用し、センサ設置間隔を含めた本手法の適用範囲を検討する。また、実際の構造物へのアプローチとしては、首都大学東京内のひび割れを有する建物を対象に、本手法を適用し、本手法の有効性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、実構造物への適用性が本研究の柱となることから、使用するセンサ、ケーブル、アンプの増設に伴う支出が必要である。また、他大学の研究者と名古屋大学設置のニューブリッジでの共同実験や意見交換を予定しており、国内移動に伴う旅費が発生する。この共同研究に伴い、学生2名を実験補助として同行させるつもりである。さらに、これまでに得られた結果を対外的に発表するため、国内外の学会・会議への参加料、投稿料、旅費が発生する。
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