研究課題/領域番号 |
23760422
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北根 安雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10444415)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 鋼管杭 / 腐食損傷 / 性能回復 / 補修 / 添接板 |
研究概要 |
本研究は,腐食した鋼管杭に対する添接板による補修工法として,水中溶接鋼板添接補修とCFRP水中接着補修を取り上げ,添接板補修による性能回復効果を定量的に把握することを目的としている. 平成23年度は,まず腐食表面を数値的に作成するシミュレーション方法について文献調査を行った.これまでに提案されたモデルとしては,空間的自己相関に基づく方法,腐食深さの頻度分布に基づく方法,腐食減肉をアタック因子が作るクレータと仮定し腐食進展挙動を推定する方法などが存在する.特に空間的自己相関に基づく方法では,空間統計解析で利用されるバリオグラム特性を利用したモデル,腐食深さの確率分布をワイブル分布と仮定したモデル,腐食表面のスペクトル密度関数を用いて多次元AR法利用したモデルなど各種モデルがある,各モデルで腐食表面作成に必要なパラメータの数,それらパラメータが簡単に同定可能かどうかなどについて調査した.調査結果に基づいて,平成24年度に本研究で使用するシミュレーションモデルを決定する. また,平成23年度は,水中溶接鋼板添接補修を行った鋼管杭の繰返し曲げ載荷条件下でのエネルギー吸収性能について数値解析により検討を行った.耐荷力のみを回復するのであれば,減肉分の板厚を補うように添接板の板厚を決定すればよいが,エネルギー吸収性能を回復するためには,さらに厚い添接板を用いる必要があることが明らかとなった.これは,減肉した母材および添接板の径厚比が減肉前の鋼管の径厚比よりも大きいため,補修鋼管は,最大荷重に達した後,座屈挙動が顕著に表れ,荷重が急激に低下することに原因がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水中溶接鋼板添接補修に関しては,繰り返し荷重下でのエネルギー吸収性能については,今年度検討することができた.残る課題は,腐食凹凸が補修性能に与える影響について明らかにすることである.現在,数値的に腐食表面を生成するモデルについて検討を行っており,海洋環境下の腐食を表現するのに適したモデルを決定して,数値解析的に腐食凹凸が補修性能に与える影響について検討する予定である. CFRP水中接着補修については,平成24年度に表面粗さを持つ鋼板を用いて圧縮せん断強度実験を行う予定であり,実験の準備を進めている. 全体としては,研究目的全体の4割程度の進捗状況と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は,表面粗さを持つ鋼板の圧縮せん断強度実験の実験供試体の製作を上期に行い,下期に実験を行う.そのために実験供試体の詳細設計を6月までに行う. 腐食表面生成モデルについて,継続的に検討を行い,上期の間に使用するモデルを決定し,下期に腐食凹凸を持つ補修鋼管の耐荷力解析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究費は,H23年度からの繰越額とあわせ,主として実験供試体の製作加工に約60%,実験消耗品に約25%,残りの15%は解析ソフトウェアのライセンス料とする予定である.
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