研究課題/領域番号 |
23760422
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北根 安雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10444415)
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キーワード | 鋼管杭 / 腐食損傷 / CFRP / 接着 / 性能回復 / 補修 |
研究概要 |
本研究は,腐食した鋼管杭に対する添接板による補修工法として,水中溶接鋼板添接補修とCFRP水中接着補修を取り上げ,添接板補修による性能回復効果を定量的に把握することを目的としている. 平成24年度は,腐食した鋼管杭のCFRP接着補修に着目し,鋼管杭の腐食表面粗さが補修による性能回復効果および接着強度に与える影響を明らかにすることを目的とした. まず,港湾鋼構造物の腐食表面粗さに関する文献調査を行い,過去に港湾技術研究所が行った腐食状況調査から,鋼管杭の代表的な粗さパラメータに関する情報を得た.表面粗さの波の波長については約25mm~38mmの範囲にあり,輪郭曲線の最大高さと平均腐食量には正の相関があることがわかった.次に,腐食表面粗さをもつ鋼板にCFRP板を接着した有限要素モデルを作成し,表面粗さが補修効果に与える影響について解析的に検討した. その結果,断面欠損部に表面粗さが存在する場合では,粗さの振幅が大きくなるにつれ鋼板最小板厚部分の応力が大きくなり,欠損部の最小板厚を基準として補修に必要なCFRP板の板厚を設計しても,粗さの谷部分では粗さのない場合の応力まで回復できないことがわかった.さらに,一般部に表面粗さが存在する場合では,CFRPによる接着補修性能への影響は大きくないことも明らかとなった.また,今回検討した粗さの範囲では,接着面に粗さが存在しても,補修に必要なCFRP板の必要長さはほとんど変化しなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は,水中溶接鋼板添接補修に着目し,繰り返し荷重下でのエネルギー吸収性能について検討した.その結果,耐荷力のみを回復するのであれば,減肉分の板厚を補うように添接板の板厚を決定すればよいが,エネルギー吸収性能を回復するためには,さらに厚い添接板を用いる必要があることを明らかにした. 平成24年度は,CFRP水中接着補修に着目し,腐食表面粗さが性能回復効果に与える影響について,線形有限要素解析により検討を行った.その結果,減肉部に粗さが存在する場合に,性能を回復するために必要なCFRP板の板厚が粗さのない場合に比べて大きくなることを明らかにした.さらに,腐食表面粗さがCFRPの鋼板に対する接着強度に与える影響について検討を行う予定であり,実験供試体の準備を行っている段階である.必要な結果を得るための実験供試体に用いる粗さの決定に予想以上に時間がかかったため,実験的検討は平成25年度に行う予定である. 全体としては,研究目的全体の8割程度の進捗状況と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究計画では,鋼材腐食面にCFRPを接着した場合の接着強度と表面粗さとの関係を明らかにするため,JISK6852で規定されている接着剤の圧縮せん断接着強さ試験法を参考にして,圧縮せん断実験を行う予定であった.しかし,接着強度に影響を与える粗さパラメータの同定に関して,予想していた以上に時間を要したため,これまでに粗さを有した鋼板にCFRP接着補修したモデルの解析のみが終了している.現在,実験供試体を準備しており,今後,実験の準備が整い次第,速やかに実験を実施する予定である.また,実験ケースを再現できる数値解析モデルの開発を行い,接着強度を予測できる解析モデルを作成する.それにより,様々な粗さパラメータを持つ腐食表面の接着強度に与える影響を検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は,主として実験供試体の製作加工に約80%,残り20%を実験消耗品に使用する予定である.
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