研究課題
溶接止端から疲労き裂の発生を防止し疲労強度を向上させる方法として,溶接止端に圧縮残留応力を導入する方法がある.この方法では,溶接止端部の平均応力を圧縮側にシフトさせることによって疲労強度を向上させている.しかし,圧縮残留応力を導入した後,大きな圧縮の荷重(オーバーロード)が作用した場合,溶接止端部が局部的に圧縮降伏し,オーバーロードが除荷された後,溶接止端の平均応力が再び引張側にシフトして,疲労強度の向上効果がなくなる場合がある.本研究では,圧縮残留応力の導入による疲労強度改善効果に,圧縮のオーバーロードが与える影響を明らかにすることを目的としている.本研究で対象とした構造詳細は,面外ガセット溶接継手,荷重非伝達形リブすみ肉溶接継手,カバープレート,ストップホールとした.各試験体に対して,溶接したままの疲労試験,圧縮残留応力を導入した状態の疲労試験および圧縮残留応力を導入した後に圧縮のオーバーロードを与えた疲労試験を行った.疲労試験はすべて板曲げ疲労試験とした.疲労試験の結果,全ての構造詳細に対して,圧縮残留応力を導入した試験体の疲労強度は,溶接のままの疲労強度と比べて大きく改善されることを確認した.圧縮残留応力を導入した後に圧縮のオーバーロードを載荷した試験体では,構造詳細毎に,圧縮のオーバーロードが圧縮残留応力の導入による疲労強度改善効果に与える影響が異なり,疲労強度等級が低い構造詳細ほど,圧縮のオーバーロードによって疲労強度改善効果が低減する傾向があった.
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International Journal of Steel Structures
巻: Vol.13, No.1 ページ: 175-181
http://link.springer.com/article/10.1007/s13296-013-1016-7
材料
巻: 第62巻,第1号 ページ: 33-38
DOI10.2472/jsms.62.33