研究課題/領域番号 |
23760426
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小野 祐輔 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00346082)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | SPH法 / 斜面 / 地震応答 / 数値解析 |
研究概要 |
メッシュフリー粒子法の一種であるSmoothed Particle Hydrodynamics(SPH)法による斜面の地震応答解析プログラムの高度化を実施した.平成23年度の主要な成果として,SPH法における特有のパラメータである粒子密度,人工粘性減衰が斜面の地震応答解析結果に支配的な影響を及ぼすことを明らかにした.粒子密度はSPH法における解析の空間精度を規定するパラメータであるが,斜面崩壊の様に破壊が集中する領域が現れる場合には,この値により滑り線の発生位置,滑り崩壊後の最終形状について異なる解析結果が得られた.また,人工粘性減衰は,SPH法による解析を安定化させるためにしばしば導入される減衰であるが,粒子密度と同様に,この値によって斜面に発生する滑り線の位置,滑り崩壊後の最終的な斜面形状が異なってくる.これらのパラメータに対しては,斜面の地震応答性状を予測する際に,その値に対して十分な検討が必要があることが示唆された.一方,他の研究グループによって実施された斜面の振動台実験の結果を対象とした解析を行った,対象とした振動台実験で用いられた斜面供試体は高さ1mから4mまでの比較的大規模なものである.SPH法による解析によって,崩壊に至る入力レベル,斜面滑り時の滑り速度,崩壊後の形状について再現することができた.ただし,実験結果を再現するためには,与える減衰の大きさを調整する必要があり,実斜面の地震災害に対する予測解析として用いるには解決すべき問題点が残されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画していたSPH法の斜面の地震応答解析の高精度化については,他の研究グループによる振動台実験を再現する解析結果が得られたため,おおむね当初の目的を達成した.一方,地盤材料の流動化現象の解析モデルの導入については,振動台実験の再現解析において,従来より使用していたMohr-Coulomb式による応力-ひずみ関係によっても良好な結果が得られたことで,他の構成則の導入を進めなかった.より一般的な斜面に対してもSPH法解析を適用するためには,他の構成則の導入も必要となると考えられるため,平成24年度に検討を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度おいては,当初の予定通りの(1)「滑り面を取り扱う解析アルゴリズムの開発」と(2)「GPUによる計算速度の高速化」に加えて,平成23年度計画で予定通りに実施できなかった(3)「地盤材料の流動化現象の解析モデルの導入」を行う.(1)については,対象となる現象が再現できることを確認しながら作業を進める必要があるため,実験の再現解析も並行して行う.(2)について,GPUによる解析を実施するため,数値解析用GPUを搭載した特殊なワークステーション上でプログラムの開発を行う.プログラムの開発はNVIDIA社による数値解析用GPUを対象とした開発環境CUDAを用いて実施する.(3)については,材料の繰り返しせん断による軟化と引張挙動を取り扱うことのできる構成則を導入することによりプログラムの改良を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では,平成23年度に大規模な計算が可能な数値解析用GPUを搭載したワークステーションを導入し,プログラム開発を行う予定であったが,研究代表者が実施している他の研究プロジェクトによって数値解析用GPUを搭載したワークステーションが導入され,本研究課題に関しても使用可能となったため,プログラムの開発を主な使用目的として価格の低いワークステーションを購入したため,次年度使用額が発生した.これは,ワークステーションの価格に対する性能は,急速に発展しており,購入時期を遅らせれば遅らせるほど同じ価格で高性能なものが購入可能となることを考慮したことも一因である.平成24年度中にGPUによる解析が可能なプログラムをほぼ完成させる予定であるため,平成23年度における次年度使用額と平成24年度の研究費を併せて,大規模な解析のための数値解析用GPUを登載したワークステーションの導入を行う.また,学会・国際会議に参加すること,あるいは研究協力者との討議や技術的な協力を得るための旅費,解析プログラムの開発補助に対する謝金を使用する.
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