研究課題/領域番号 |
23760426
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小野 祐輔 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00346082)
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キーワード | 粒子法 / 斜面崩壊 / 地震応答 / 大変形 / 数値解析 |
研究概要 |
本研究は,メッシュフリー粒子法の一種であるSmoothed Particle Method (SPH) 法による地震時崩壊の再現のための解析プログラムの開発を目的としている.交付申請書では,平成23年度にそれまでに研究代表者が作成したSPH 法による斜面の地震応答解析を行う解析プログラムを元に,さらなる解析精度の向上と流動化による大変形を追跡する機能を追加し,平成24年度に滑り破壊面の生成と滑りによる大変形を再現するためのアルゴリズムの開発と実装,ならびにGPUを用いた解析速度の向上を行う計画としていた.さらに,平成25年度には,既往の実験を対象とした再現解析を実施し,開発した解析手法の妥当性と適用性を検証するとともに,研究成果をとりまとめる予定であった. これらの研究計画に対し,平成24年度では,実大三次元振動破壊実験装置E-Defenseを用いて原子力安全基盤機構が実施した大型斜面模型実験の詳細データが入手できたたため,研究計画では平成25年度中に実施予定であった実験結果の再現解析を前倒しして重点的に実施した.原子力安全基盤機構が実施した実験では,斜面中の地震動増幅がほとんど生じない斜面に生じる滑落型と,斜面が入力地震波に対して大きく応答することで発生する進行型の二種類の崩壊モードを想定した斜面モデルが用いられた.平成24年度では,この両者を対象とした再現解析を実施した. 再現解析を実施した結果,SPH解析では斜面に崩壊が発生する以前の加速度応答は良好に再現できたものの,崩壊が発生する入力地震動の大きさと崩壊の形態、土塊の移動量の再現性には課題が残った.この課題を克服するためには,解析に用いる材料強度のパラメータの値や,地盤材料に用いる構成則が影響するため,実験結果を完全に再現するためには数多くのパラメータスタディが必要となるとの結論を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記した研究計画では,平成24年度中に斜面崩壊時の滑り面を取り扱うアルゴリズムの開発とGPUを利用した解析プログラムの高速化を完了する予定であった.これに対し,現状ではGPUを用いた高速化の進行が遅れている.これは,防災科学技術研究所・兵庫耐震工学研究センターが所有する実大三次元振動破壊実験装置E-Defenseを用いて,原子力安全基盤機構が実施した大型斜面模型実験の詳細データが入手でき,その再現解析に重点を置いた研究活動を行ったためである.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度研究費によって,GPUを用いた解析プログラムの高速化のために必要なソフトウェア(コンパイラ)を導入しているため,平成25年度当初からこれを用いた研究開発に重点的に取り組む.一方,交付申請書では平成25年度に実施予定の実験結果の再現解析に関連して,原子力安全基盤機構が平成23年度中に実施した防災科学技術研究所・兵庫耐震工学研究センターの実大三次元振動破壊実験装置E-Defenseを用いた大規模斜面崩壊実験の詳細なデータが入手でき,その再現解析について平成24年度中に重点的に取り組むことができた.すなわち,研究開始時点で予定していた実験の再現解析が前倒しして実施できており,その分をGPUを用いた解析プログラムの高速化の作業に充てる.
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次年度の研究費の使用計画 |
GPUを用いた解析プログラムの高速化に関わる研究の進行が遅れているため,これに関連する謝金(プログラム作成補助),消耗品の購入分が次年度使用額となった.平成25年度に請求する研究費は,主に研究打合せと資料収集に関わる旅費,研究成果発表のための旅費,,解析プログラム作成補助に対する謝金としての使用を予定しており,次年度使用額と合わせて使用する.
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