研究課題/領域番号 |
23760428
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
松原 仁 琉球大学, 工学部, 助教 (50414537)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 第4紀琉球石灰岩 / き裂進展シミュレータ / 節点ベース有限要素法 / 移動最小自乗法 |
研究概要 |
砕屑性の琉球石灰岩を対象に,岩の微細構造(粒子)を考慮することができる節点ベースの新しい離散き裂進展解析法の開発に着手し,研究を進めている.本手法は,弾性領域で高精度な解を算出することができるEnriched Free Mesh Method(EFMM)と,任意の位置において高精度な近似解を得ることができる付帯条件付多次元移動最小自乗法(C-MultiMLSM)を組み合わせることで構築されている.すなわち,弾性状態にある箇所ではEFMM,き裂が発生した箇所ではC-MultiMLSMに基づいた節点剛性を用いることで,弾性状態から破壊の最終段階に至るまでをシームレスかつ高精度に計算することが可能となる.また,砕屑性の琉球石灰岩に見られるような微細粒子の複雑な形状に関しては,ボロノイ多角形として考慮することが可能であることから,岩の微細粒子の界面に沿って進展するき裂を高精度に解析することができるツールのひとつとして期待できる.なお,岩石中にある微細な空隙や先在き裂も容易に考慮することが可能である. 一方,実験的アプローチにおいては,沖縄島全域に渡って採取した第4紀琉球石灰岩(5地域から採取),中生代石灰岩および古生代石灰岩の乾燥密度,一軸圧縮強さ,静弾性係数,ポアソン比等の基本的な材料物性を室内実験より得ることができた.なお,一軸圧縮強さに関しては湿潤状態における値も得ている.これらの材料パラメータは本シミュレータの基礎データとして用いる予定である. 以上のように,計算力学的アプローチと実験的アプローチを平行して研究を進めている.これらの成果は国内外の学術誌や学術講演会において発表してゆく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,計算力学的なアプローチと実験的なアプローチを併用することで,琉球石灰岩のための高性能破壊力学シミュレータを開発しようとするものである.平成23年度は,計算力学的なアプローチとしては,岩の微細構造が考慮可能な高性能シミュレータの開発を目指した.その結果,報告者が過去の研究において開発したEnriched Free Mesh Methodと付帯条件付多次元移動最小自乗法を発展させ組み合わせることで,き裂が岩の微細粒子の界面に沿って進展する様を精度よく解析することができる数値シミュレータを開発することができた(脆性材料における破壊進展挙動に関しては,既に検証済である).また,本手法は岩石内部の先在き裂の分布も考慮できるように構築されており,これらを考慮したき裂進展シミュレーションを実施したところ,微細な先在き裂の分布が岩石全体の巨視的なき裂生成パターンに大きな影響を与えていることが分かった. 実験的なアプローチとしては,高精度なシミュレーションを実現するために,琉球石灰岩の材料特性(乾燥密度,一軸圧縮強さ,静弾性係数,ポアソン比等)をマクロ実験にて獲得することを目指した.その結果,沖縄本島に存在する第4紀琉球石灰岩(5地域から採取),中生代石灰岩および古生代石灰岩に関して,その材料パラメータを得ることができた.しかしながら,今年度は琉球石灰岩のマクロ実験に注力したために,その空隙分布を模擬したセメントモルタルモデルを用いたモデル実験には至らなかった.このことについては,次年度に進めてゆく. 以上のとおり,両アプローチ共に概ね順調に進んでいる.なお,平成23年度に得られた結果については,各種学術雑誌に投稿済みである.
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今後の研究の推進方策 |
琉球石灰岩のようなき裂性岩盤における水分の流れや分布を考慮することができる数値解析モデルを新たに構築し,その一部を平成23年度に開発した破壊力学シミュレータに実装する.本モデルに関しては,骨格構造ばかりでなく,先在き裂の分布や方向が考慮できるようなモデルの構築を第一に考えながら議論してゆく.また,本シミュレータの拡張性を考慮し,大規模数値計算技術等の導入も視野に入れて議論を進めるものとする.具体的には,OpenMPをベースとした並列計算機能の組み込みも同時に検討する.一方,実験においては,前年度で獲得した強度試験のデータの分析を進める.また,琉球石灰岩の空隙分布を模擬したセメントモルタルモデルを作成し,空隙量と破壊形態の関連性について実験的に議論する.なお,これらの実験結果は解析結果とのキャリブレーション用データとしても用いるものとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は,琉球石灰岩のマクロ実験に注力したために,その空隙分布を模擬したセメントモルタルモデルを用いたモデル実験には至らなかった.そこで,このモデル実験に関わる費用は次年度に使用することとする.以下に研究費の使用計画を記す.●物品費(\452,371):(1)空隙モデル実験に関わる物品(JIS標準砂,ひずみゲージ,機械試験消耗品など),(2)PCクラスタ(×3),(3)研究図書(多孔質体の関わる分野における専門書・解説書)●旅費(\410,000):「4th International Conference on Computational Methods」への参加旅費●人件費(\30,000):実験補助●その他(\60,000):(1)論文校閲費,(2)学会参加費
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