腐食対策コストの削減,経済的および人的被害の防止の観点から正確な腐食予測手法の開発が期待されている.さらに,水・エネルギー重要の拡大に伴い取水ポンプ,熱交換機等の流れ場における腐食予測手法の精度向上に対する要求が高まっている.腐食反応速度を決定する分極曲線と電場解析を用いて,定量的かつ汎用的な腐食予測を実現することが可能である.しかし,稼働中のプラント配管や高速回転中のタービンブレード表面で分極曲線を直接測定することは困難である.そこで,実験室環境での電気化学測定実験と数値シミュレーション技術を組合せて,実環境流れ場における腐食予測手法の開発を目指した研究を行った. 具体的な成果を以下に示す. まず,腐食反応界面の流動特性から分極曲線を予測するモデルの提案を試みた. 23年度は,腐食反応界面近傍の流動特性を変化させて分極曲線の測定を行い,基礎データベースを構築した. 24年度は,基礎データベースを基に分極曲線を壁せん断応力の関数としてモデル化した.ただし,モデル化する際の壁せん断応力は,数値流体解析を用いて評価した.これは,腐食予測を行う際に,実構造物の壁面に生じる壁せん断応力を数値流体解析により評価するためである.次に,数値流体解析と電場解析を組合せて任意の流れ場における腐食予測システムを構築した.構築したシステムを用いて,複雑流れ場での腐食予測を行った.予測結果と実験結果の腐食位置を定性的に比較し,システムの有効性を確認した.今後は,定量的な検討を行う. 腐食反応が進むと表面粗さが変化し,流れ場も変化する.表面形状の変化による流動特性の変化を考慮することでより実現象に近い腐食を予測が可能となる.さらに,腐食反応界面近傍の反応物質濃度を考慮することで予測精度の高精度化が期待できる.今後,以上の課題についても検討を進める.
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