研究課題/領域番号 |
23760434
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
大山 理 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (70411410)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 橋梁 / 火災 / 耐火被覆 |
研究概要 |
わが国の橋梁においては,これまで,火災によって多数の死者を伴う事故が発生していないことから,耐火性能は要求されていないのが現状である.しかし,車輌火災,桁下での可燃物からの出火などの要因により,一般橋梁や高架橋が火災を受ける事例が数多く報告されている.例えば,2008年8月上旬,首都高速5号線北池袋IC付近において,タンクローリーが横転・炎上し,鋼主桁や橋脚などに著しい損傷が生じたため,2ヶ月間を要して,損傷部の架け替え工事が行われた.そして,この間の交通規制によって,首都高速道路のみならず,周辺の一般道路でも渋滞が発生し,首都圏の交通に大きな影響を与えた. このように,一般橋梁や高架橋が火災を受けると,最悪の場合,落橋も考えられ,落橋に至らない場合でも,調査や補修などによる長期間の交通規制が必要となる.すなわち,被災した橋梁の損傷状況や安全性を迅速かつ適確に判断することが重要であると考えられる. そこで,本研究は,桁供試体を2体製作し,1体目は,耐火被覆を施さない状態で加熱試験を実施し,火災による熱の影響を受けた橋梁の損傷状況を把握する.一方,もう1体は,耐火被覆構造を考案し,その構造を桁に施した状態で加熱試験(上記と同じく,最高:1100℃)を実施する.そして,各部材の受熱温度の計測結果より,その被覆構造の妥当性を確認することを目的とする. 今年度は,まず,桁に取り付ける耐火被覆構造の検討を行うとともに,耐火材の選定を行った.つぎに,汎用解析ソフトを用いて熱伝導解析を実施し,桁の受熱温度を推定した.最後に,加熱試験に用いる桁の製作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,まず,耐火パネルを桁に取り付ける方法など,構造概要について検討を行った.耐火パネルは,金具を用いて,下フランジ下面から,主桁のメンテナンスや交差道路に対する建築限界などを考慮して設置する(=空気層を設ける).この空間は,耐火パネルを主桁に直張りするよりも,下フランジの温度上昇を抑制することができるため,効果的であると考えられる.なお,パネル間の隙間から熱が内部に進入する恐れがあるため,その対策を講じる必要があるが,その対策は,現在,検討中である. つぎに,今日用いられている耐火材から,セラミックファイバーブランケットなど,耐火材の熱特性,施工性ならびに経済性などの観点から決定を行った. さらに,汎用解析ソフトを用いて,耐火被覆を施した場合と施さなかった場合の桁の熱伝導解析を実施し,主桁の受熱温度の算出を行った(なお,耐火被覆を施した場合の解析は,現在も継続して行っている). 最後に,実験計画書の作成を行い,供試体の製作(2体)を行った(コンクリート内部には,事前に温度計測センサーを取り付けた). 以上より,現在も検討中や解析を行っている項目があるが,おおむね順調に進展していると判断致しました.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,まず,製作した1本目の桁を,タンクローリーが横転・炎上したことを想定し,ヨーロッパの設計規準であるユーロコードに規定されている炭化水素曲線(HC)のように最高温度が短時間で1000℃を超えるような曲線で加熱を実施する.そして,鋼桁およびコンクリート床版内部の受熱温度を計測するとともに,熱伝導解析結果との比較・検討より,解析モデルの検証などを行う.また,コンクリート床版に発生するひび割れ状況の観察や変形の計測も行う. 一方,もう1体は,考案した耐火パネルを桁に施し,上記と同じ条件で加熱試験を実施する.そして,各部材の受熱温度の計測結果より,その耐火被覆構造の妥当性を確認する. 実験終了後は,耐火被覆構造を施したことによる効果をまとめ,報告書を執筆する.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず,耐火パネル,そのパネルを桁に取り付ける部材の製作を行う必要がある(当然のことながら,耐火材の購入も必要である). つぎに,桁の受熱温度や変形などの計測に関しては,加熱しながらの計測となるため,業務の一部を専門の業者に依頼することも検討している. あとは,資料収集のための学会(年次学術講演会)への出張旅費や論文投稿の費用である. 以上まとめると,(物品費)耐火パネルの製作,(人件費・謝金)計測費,(旅費)学会出張が,次年度の研究費の使用計画である. 次年度使用額1,995,000円は,【現在までの達成度】に記した供試体2体の製作費である(平成23年度に製作の発注を行ったが,納品されたのが平成24年度であった).
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