近年,橋梁において桁下での車両事故や放火,不審火などを原因とする大規模な火災が発生している.例えば,首都高速5号池袋線(2008年)では,タンクローリー車の横転・炎上により,橋桁およびコンクリート橋脚が大きな被害を受け,大規模な車線規制と橋桁の架け替えが約2か月にわたって行われ,その経済損失は,計り知れないものであった. そこで,高架橋として多く採用されている合成桁橋の桁下で火災が発生した場合を想定した加熱実験を実施し,鋼桁やコンクリート床版内部,鋼とコンクリートの合成の要となるスタッド基部の受熱温度や,高温下における合成桁の変形および耐荷力を把握することを1つ目の研究目的とする.さらに,ケイ酸カルシウム板やセラミックファイバーブランケットなどを用いた耐火被覆構造(パネル)を考案するとともに,その構造を桁に施した状態で加熱試験を実施し,各部材の受熱温度の計測結果より,その耐火被覆構造の妥当性を確認することを2つ目の研究目的とする. 加熱試験の結果,耐火パネルを施さなかった桁のウェブおよび下フランジの受熱温度は,開始約20分で,炉内温度(最高:1100℃)とほぼ同じになった(上フランジは,コンクリート床版と接しているため,若干,低い温度であった.なお,変形が大きくなったため,加熱開始30分で実験は終了).また,受熱温度の測定値は,熱伝導解析結果とほぼ一致する結果が得られた. 一方,上述の首都高速における火災事故同様,最高温度1100℃,90分間の加熱条件で,耐火パネルを施した桁の受熱温度は,一部,鋼材の降伏強度が低下し始める400℃以下にならない箇所があった.それは,加熱によりパネルに変形が生じ,その隙間から,熱が流入したためと考えられる.今後,熱の流入を確実に防止するため,構造細目を検討する必要があると考えられる.
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