研究課題/領域番号 |
23760437
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
鴨志田 直人 岩手大学, 工学部, 助教 (00400177)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 粒子分散系複合材料 / 岩石-間隙水系 / 熱拡散率 / 任意加熱法 |
研究概要 |
低温液化燃料の岩盤内貯蔵施設を設計するための熱伝導解析では,その基本的物性として水や氷が内在する岩盤の熱物性値(熱伝導率,熱拡散率,比熱)を把握する必要がある。本研究では,研究代表者らが常温における岩石の熱拡散率測定の有用性を実証した任意加熱法を用いて,0℃以下における湿潤岩石(飽和含水状態の岩石)の熱拡散率の測定を試みた。具体的には,荻野凝灰岩(有効間隙率28.7%),来待砂岩(20.2%),姫神花崗岩(0.97%)を供試岩石として用い,始めに,-25℃における湿潤岩石と乾燥岩石(強制乾燥状態の岩石)の熱拡散率の測定を試み,その測定精度を検証した。次に,間隙水の未凍結状態から凍結終了以降までの温度範囲(0℃~-100℃)において,湿潤岩石の熱伝導率を連続的に測定し,その変化挙動を明らかにした。その結果,以下の知見を得た。1.-25℃における湿潤岩石(飽和含水状態の岩石)の熱拡散率は,荻野凝灰岩で0.57±0.038mm2/s(標準誤差±3.8%),来待砂岩で0.64±0.034mm2/s(±2.0%),姫神花崗岩で1.73±0.060mm2/s(±3.5%)であり,任意加熱法を用いることで概ね誤差3%の再現性で計測可能である(1供試体3回計測の場合)。2.-25℃における湿潤岩石の熱拡散率を同温度における乾燥岩石(強制乾燥状態にある岩石)の測定結果と比較すると,荻野凝灰岩で150%,来待砂岩で180%,姫神花崗岩で144%と,熱拡散率は湿潤岩石の方が大きい。3.-100~0℃の間の任意の温度で6点を連続的に計測したところ,荻野凝灰岩では,湿潤状態,乾燥状態ともに熱拡散率の変化(増減)は確認できない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,荻野凝灰岩,来待砂岩,姫神花崗岩の3岩種について,間隙水の未凍結状態から凍結終了以降までの温度範囲(0℃~-100℃)における湿潤岩石の熱拡散率を,連続的に測定する予定であった。しかし,実験操作の習熟に予定以上の時間が掛かったため,本年度は,荻野凝灰岩の計測を終えるのみとなった。よって,現在までの達成度はやや遅れていると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度では,まず始めに今年度やり残した来待砂岩,姫神花崗岩について,間隙水の未凍結状態から凍結終了以降までの温度範囲(0℃~-100℃)における湿潤岩石の熱拡散率を測定する。次に,得られた結果を基にして,乾燥岩石,湿潤岩石,および,凍結岩石の熱伝導率推定式の構築を行う。具体的には,岩石を粒子分散型複合材料(母材;造岩鉱物,粒子;間隙)と仮定し,粒子材料の違い(空気,水,氷)で岩石の含水状態・凍結状態を区別することにより岩石の熱伝導率を算出できるモデルを構築する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度では,粒子分散系複合材料の熱伝導率モデル化の際に必要となる解析ソフトウェアおよび可視化ソフトを購入する予定である。また,追加実験の際に必要となる冷媒,冷却実験消耗品を購入する予定である。さらに,研究成果を発信する経費として,論文・研究発表と学会誌投稿を行う予定である。
|