研究課題/領域番号 |
23760445
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
川口 貴之 北見工業大学, 工学部, 准教授 (20310964)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 凍上 |
研究概要 |
本年度は,まず始めに既に開発済みである凍結・融解履歴を与えることが可能な繰返し一面せん断試験装置とピストンと底盤,容器側面にベンダーエレメントが取り付けられた凍上容器を用いて,第一に凍結・融解履歴の有無によるせん断強度および変形挙動の違いを明らかにすること,第二に凍結・融解によって各方向に伝播するせん断波速度がどの程度変化するのかを明らかにすることを予定していた.また,次年度以降の透水係数の異方性に関する研究に使用する矩形供試体用凍結・融解試験装置の開発に着手することも予定していた. 本年度はおおむね順調に進展し,一面せん断試験装置を用いた試験からは,定圧一面せん断試験時の初期剛性とせん断強度は凍結・融解履歴に伴う間隙比の増減にかかわらず,凍結・融解履歴を受けていない供試体の方が大きくなる傾向にあったこと,凍上容器を用いた試験からは,鉛直方向に伝播するせん断波速度から得られたせん断弾性係数は凍結前の間隙比や凍結・融解履歴による間隙比の増減とは無関係に大きく減少し,その低下は水平方向に伝播するせん断波速度から得られたせん断弾性係数よりも大きいことが分かった. また,以上の試験結果からアイスレンズの生成と消失によってできた構造的な損傷が変形・強度特性に大きな影響を与えていること,アイスレンズの生成と消失によってできた構造的な損傷は荷重の載荷によっても元の状態に戻りにくいことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,まず始めに既に開発済みである凍結・融解履歴を与えることが可能な繰返し一面せん断試験装置とピストンと底盤,容器側面にベンダーエレメントが取り付けられた凍上容器を用いて,第一に凍結・融解履歴の有無によるせん断強度および変形挙動の違いを明らかにすること,第二に凍結・融解によって各方向に伝播するせん断波速度がどの程度変化するのかを明らかにすることを予定していた.また,次年度以降の透水係数の異方性に関する研究に使用する矩形供試体用凍結・融解試験装置の開発に着手することも予定していた.一面せん断試験装置を用いた試験については,予定していたよりも幾分試験数が少なかったが,凍上容器を用いた試験については予定以上に試験を行い,新たに開発した矩形供試体用凍結・融解試験装置については予備実験まで行うことができた.しかし,以上の試験結果から,アイスレンズに平行な方向に実施する一面せん断試験だけでなく,直角方向にもできれば,異方性に関してより明確な情報が得られると考えられ,これを早急に明らかにすべきとの新たな結論を得た.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は先述した強度・変形特性の異方性に関する実験を継続していくとともに,先述したアイスレンズに直角な方向に対する一面せん断試験も実施し,強度異方性に関してより詳細な成果を得ることを試みる.そして,前年度に開発した凍結・融解試験装置によって作成された矩形供試体を入れ,多孔板を取り付ける位置を変えることでアイスレンズに垂直・平行な方向に関する透水試験を実施できるキュービックモールドを開発することを予定している.このモールドは側面の板を取り替えることで締固め矩形供試体を作成することや,先述の結果と比較するためにBEの取り付けも可能とし,他の試験結果との比較検討を容易にするための工夫を施すが,すでに現有の装置を改良することで大部分が完成しているため,比較的早い段階での完成を想定している.そして,本試験装置を用いることでアイスレンズに垂直・平行な方向の透水係数がどの程度変化するのかを明らかにする.アイスレンズが融解することで生じた空洞(微小クラック)によってアイスレンズに平行な方向の透水係数がとりわけ大きくなることが予想されるが,先述の一面せん断試験やBE試験によって得られる強度や剛性の異方性との相関についても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
先述したように,アイスレンズに垂直・平行な方向に関する透水試験を実施できるキュービックモールドについては,現有品を改良することで大部分が完成している.しかし,本年度実施した一面せん断および凍上容器での試験結果を踏まえると,アイスレンズに直角な方向に対する一面せん断試験の実施が不可欠であると考え,これを可能にするためのせん断箱や融解治具などの設計・制作に本年度の未使用も含めて使用する予定である.また,これ以外については申請段階での予定通り論文投稿料や中間報告のための旅費に使用する予定である.
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