研究概要 |
気候変動に伴う降雨強度や降雨量の増大は既に顕在化しており,社会基盤構造物である盛土構造物の降雨による被災の増加が懸念されている。本研究では,経験的に特に降雨時安定性の低い斜面上にある盛土構造物の耐降雨性能を向上させる方法を検討・提案することを目的としている。 初年度(平成23年度)では,1G場での降雨浸透模型実験を実施して斜面上にある盛土構造物の降雨時崩壊の要因を実験的に調べた。この結果,A)地山あるいは周辺地盤からの盛土内に浸透した雨水による盛土内地下水位面の上昇,B)法表面を流下する地表面水による浸食,の2要因が盛土構造物の変状・崩壊の抑制に重要であることが確認された。 平成24年度では,地盤補強技術および土中水の排水技術をもとに上記A),B)への対策を提案し,その効果を同様な降雨浸透模型実験により検証した。A)に関しては,不安定化する盛土の法先部をジオシンセティックス補強土技術で置換・補強を行いつつ,集水井戸と水平排水工を併用・設置することによって盛土内地下水位面と浸透圧を制御する方法を提案した。また,要因B)へは,法表面に面状の高分子補強材を設置・覆土することによる浸食対策を提案した。この様な複合的な対策をバランス良く行うことによって,設計の想定を越える豪雨によって盛土内地下水位の著しい上昇や地表面水が作用しても盛土の耐降雨性能を著しく向上できること,豪雨が繰返し作用しても盛土構造物の安定性を保持できることを実験的に確認した。本研究で提案する対策は新設構造物だけでなく,既設構造物にも適用可能である。
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