研究課題/領域番号 |
23760450
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
猿渡 亜由未 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00563876)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 粒子-流体相互作用 / 流れの可視化 / 粒子底面 |
研究概要 |
流れ場の底面を構成する粒子とそれを取り巻く液相の屈折率を一致させる事により,せん断流下の底面粒子の運動を可視化する事に成功した. 沿岸域や河川域など自然界における多くの流れ場においてその底面は砂やレキなどの粒子で構成されている.粒子底面近傍では粒子-流体間の相互作用が乱れの発達過程を決定する重要な要因となっている一方,現在知られている多くの流れ計測法では,粒子底面の極近傍から底面下にかけての高数密度の粒子群の運動を測定する事は困難であり,この領域における流れ場の特徴については十分解明されていない.本研究の最終的なゴールは海底面における底面下の粒子から浮遊粒子までの運動を計測する事により,粒子-流体間の乱れの発達過程を解明する事であるが,その中で23年度は対象領域における高数密度粒子群の可視化計測法を確立する事を目的として研究を行った. 本研究では底面砂のモデルとしてシリカゲル粒子(屈折率1.46)を,液相にヨウ化ナトリウム水溶液(屈折率1.33--1.49)を用いた.両者の屈折率を完全に一致させると底面を構成する粒子が液相中で透明化し見えなくなる.この粒子底面の一部に着色したシリカゲル粒子をトレーサーとして混入する事により,せん断流を受ける時の底面下の粒子の挙動を可視化する事ができるようになる.本方法を用いてせん断流中での底面下の粒子の運動を測定し,粒子数密度,粒子速度,流速,乱れエネルギーの鉛直プロファイルを得る事ができた.この領域における速度場は本年度構築した新たな測定法を用いる事により初めて得られたものであり,本方法を用いて更なる実験を行う事によりこれまで不明であった底面近傍における乱れの発達過程について新たな知見が得られる事を期待する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した通り,シリカゲル粒子とヨウ化ナトリウム水溶液の屈折率の整合により高数密度粒子底面流れを可視化する事に成功した.これまで測定し得なかった粒子底面極近傍における高数密度の粒子-流体混相流れを可視化計測する事ができた.また,粒子底面上にせん断流を発生させた時の粒子速度と流体速度の鉛直プロファイルを比較したところ,粒子の水平速度の鉛直勾配が流体よりも小さくなっている事を確認する事ができたが,これは本計測法を用いる事により初めて明らかになったものである.この粒子-流体間の流速プロファイルの差異は乱れの発生,発達を支配する要因のひとつであり,今後の研究で乱れ強度との関係を調査していきたいと考えている. ただし,当初予定していた粒径数十マイクロメートルオーダーのシリカゲル粒子を用いたマイクロ画像計測を行うにはまだ至っていない.これはこれまでに使用していた一方向せん断流発生装置の底面に粒子を敷いた際に理想的な流れ場を作る事が困難であった為である.次年度は研究機関で保有している振動せん断流装置を使用して研究を行う予定であるが,本装置内ではより安定した流れの条件を作る事ができる事から,マイクロメートルオーダーの粒子を用いた実験を行う事ができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は振動流装置を用いた底面粒子の振動せん断流中における挙動の可視化計測を行う.23年度に使用した一方向せん断流装置では小径の粒子を用いた際に装置の隙間に粒子が詰まってしまう,底面に粒子を敷いた際に流れ場と底面の形状が安定しない等の問題点があった為,比較的大径の粒子(直径1mm程度)を用いて実験を行っていたが,本年度使用する振動せん断流装置ではより安定した流れ場が生成できる為マイクロメートルオーダーの粒子を用いた実験を行う事ができると考えている.前年度までと同様にヨウ化ナトリウム溶液とシリカゲル粒子の屈折率整合による可視化法を用いて,種々の流速,周期の振動流を作用させた際の底面粒子及び流体の速度場を画像計測し,底面の極近傍で発生,発達する乱れと流れの条件や浮遊粒子の数密度等との関係について調べる.また,本研究の測定結果をこれまでに提案されている乱れ強度を見積もる為のモデルによる予測結果と比較し,結果の妥当性を検証する予定である.本実験により基本的な流れの条件に対する粒子の挙動や乱れの発達過程について定量的に明らかになる見込みである.
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は書籍と記録メディアの購入額が予定よりも少なく済んだ為研究費の未使用額が発生した.24年度は実験装置のスケールが大きくなりその分必要となるヨウ化ナトリウム等の薬品の量も増える為,23年度未使用額はその購入費用として有効に使用する予定である.
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